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菅組のはじまり

私たち菅組は、香川県の西端に位置し、燧灘ひうちなだに面した仁尾町で産声を上げました。先祖が記した建築図面には弘化5年(1848年)とあり、ペリーが率いた艦隊が浦賀に来航したのが1853年なので、その頃にはすでに建築に携わっていたことになります。
香川県から正式に大工職の鑑札(創業の証)が出されたのは、初代総理大臣・伊藤博文が生まれたのと同年、明治42年(1909年)。以来、100年以上一貫してこの地に根を下ろしてきました。それは誇りでもあると同時に、プレッシャーでもあります。なぜなら私たちの仕事は、讃岐の風景の一部としてその先も長く残るものだからです。
アントニオ・ガウディの建築が、陽光きらめくスペイン・カタロニア地方の風土を反映しているように、私たちの仕事もふるさとの自然や風土を反映したものでありたい。その願いは、創業以来変わることなく心の中にあります。

風景をつくるしごと

そもそも宮大工の系譜である菅組は、大工とともに育ってきた会社といっても過言ではありません。現在も多くの職人が在籍し、一生懸命を尽くした現場で、ベテランが新人大工に伝統技術を継承しています。中にはひいおじいさんの頃から代々働く大工もおり、技術とともにふるさとの風景や歴史までもが、菅組のDNAとして大切に継承されています。
かつてこのあたりでは家を建てる時に、近くにある自分の山で育った赤松の丸太を梁にしました。山を持たない人は自治会所有の山から伐り出して、牛に運ばせていたものです。また、社寺建築には地元の山からひのきを調達し、その頃菅組が手がけた大規模木造建築にも、近隣の木材を使いました。
近くの山の木を使い、地域の人の手でつくられた建築が、やがてその地の風景となる。そういった営みは、長い時間をかけて培われ風土に根付いたもので、人と人の関係なくしては成り立ちません。3代、4代と大工が代を重ねて従事してくれていることで、菅組はそのような光景の多くに立ちあってきました。そのおかげで地縁の結びつきも強くなっていると感じています。
私たちが「地域の風土にあった、住む人の愛着や地域の人の誇りとなる建築づくり」「いつも誠実に向き合い、長く使われる高品質をつくりあげていく価値観」を目指すのは、古くからこの地に根付き、地域の人とともに歩んできた歴史があるからこそなのです。

菅組大工系譜

四世代系譜

山口家
岩五郎岩五郎
正一正一
宏己宏己
亮二亮二
真鍋家
音右衛門
秋雄秋雄
康国康国
清誓清誓

三世代系譜

真鍋家真鍋家
嘉三郎嘉三郎 稔
重善重善 博行博行
良三良三 智彦智彦

は、現役として活躍中

森をまもりたい

高度成長の時代、飛躍的に経済発展を続ける中で、特に施設建築においては、RC造(鉄筋コンクリート造)やS造(鉄骨造)の建築が注目され、木造建築が取り残された感がありました。
そのような木造離れを肌で感じた私たちは、放っておかれた山がやがて荒れ、森では木が育たなくなることへの危機感を感じていました。RC造やS造は、木造が不可能な空間や質感を出すことができる魅力的な構造です。しかし多くの人が集まる施設建築こそ、むしろ木造であるべきではないかと考えていました。
そこで、平成14年(2002年)に発足させたのが「讃岐の舎づくり倶楽部」です。近くの山の木を使うというコンセプトのもと、讃岐の原風景に合う家「讃岐舎(さぬきのいえ)」というコンセプトハウスをつくったり、大黒柱伐採ツアーの企画・実施をしたりと、多くの人と「山を守ろう、木を育てよう」という思いを共有するための活動を続けてきました。それらの活動によって美しい山を保ち、そこで育った木を使って建てることが、ひいては風景を守ることにつながると考えたからです。

その頃からこれまでRC造やS造でつくられることが多かった住宅以外の一般施設建築も、木造で提案する取り組みを積極的に進めてきました。木造には木造にしかない質感やあたたかみ、美しさがあるのですから。
しかし、それは木造以外の構造を否定するものではありません。木造で不可能な空間や質感を必要とされる場合はもちろんのこと、それぞれに優れた素晴らしい構造であるRC造やS造の建築にも、積極的に取り組んでいきます。そして構造がいずれの場合でも、内外装仕上げにはできるだけ素材としての木材を使っていくことを推し進めたいと思っています。
また、コンクリートを流し込む型枠材は木でできており、その木が合法木材であることや、産地のことまで考慮する責任が我々にはあると感じています。木とともに生きてきた、そしてこれからも木と共に生きていく企業の責任として。RC造やS造もやはり「木とともに」なのです…。

ふるさとの木とともに

創業100周年を迎えた平成21年(2009年)。社屋のまわりに5000本以上の「ふるさとの木」を植樹しました。それをきっかけに庭に「一坪鎮守*1」をつくることを提案したり、新築の引渡し時に3本の苗木「三本木鎮守*2」を贈るなど、『鎮守の森Project』を継続的に行ってきました。プロジェクトを通して、自然と共生するという意識を、多くの住まい手や地域とも共有し、その輪を広げています。
建築に欠かせない木材という素材は、伐採して使った後、再利用もできる優れものです。古材を家づくりに活かすこともできるので、「古木里庫」では古い梁や柱、建具を扱い、その再利用にも取り組んでいます。最後まで使い切ったら、次につなげるために植樹をする。それらは森林の健全な生態系を維持するためには必要なことで、菅組では循環を企業としての取り組みの中で実践しています。
自然との共生をいつまでも―。
ふるさとの風景をつくる役目を担う者として、木とともにある暮らしを守っていきたいと思っています。

  • *1 一坪鎮守・・・一坪ほどのスペース(たたみ2枚分)があれば、小さな鎮守の森をつくることができます。土地本来の木を植えて生きものたちのすみかとなれば、人と自然の共生のシンボルにもなります。
  • *2 三本木鎮守・・・四国の潜在自然植生の「シイ・タブ・カシ」の3本を、新築した家の庭に植樹していただいています。
    かけがえのない自然環境を守るための、小さな森です。「3本で森、5本で森林」とは潜在自然植生を提唱する宮脇昭先生の教えです。