草屋根を通してつながる世界
| 生き物が住む街へ
小さな屋根がはぐくむ野生の命
「草屋根」という言葉を耳にしたことはあるでしょうか?
文字通り「屋根の緑化」のことですが、
夏の屋内の暑さを和らげたり、野生生物の棲みかになったりと、
特に緑が少ない地域においては、生態系において貴重な役割を果たす場所でもあります。
草屋根の一番の効用は、
夏の暑い時期の強い日差しをやわらげる遮熱の強化にあります。
草屋根にしてから、風のぬける部屋では真夏でもほとんどクーラーを使わないというほど、効果を実感できるお宅もあるようです。
また植物の蒸散効果もあるので、
ささやかながらヒートアイランドの緩和にも役立っているのではないでしょうか。
そして草屋根のもう一つの役割は、ビオトープとして地域の生態系に貢献すること。
野生生物の生息場所を提供しているので、
エコロジカルネットワークのスポットの1つであるとも言えます。
年月が経つほどに草屋根ではたくさんの種類の鳥や蝶が飛びまわり、
小さな昆虫も棲みつくなど、自然界の縮図を見ることのできる場所になります。
生物多様性の喪失が深刻になる中、建築の屋根の一つの選択肢として、
草屋根はもっと注目されて良い手法ではないでしょうか。
自然の恵み、お楽しみ
草屋根には機能面のメリットだけでなく、さまざまな楽しみ方があります。
2005年から草屋根を楽しんでいるS氏は、
日本本来の自然の野草生い茂る草屋根を目指して在来種の野草を植え、
外来種は駆除するために、図鑑と格闘しながら植物の原産地を勉強したそうです。
また、ニホンミツバチの巣箱を設置して、
毎回色や味が変化する「草屋根ハニー」を採蜜するのも楽しみなのだとか。
また夏の暑い日、ビール片手に草屋根に上がって夕景を眺めたり、
キャンドルに火を灯して虫の声に耳を傾けたりと、
手軽なアウトドアスペースはどんどん熟成し
年月を経るごとに楽しみ方が増えていくようです。
それもまた草屋根の魅力の1つといえるでしょう。