自然と寄り添う暮らし

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あののぉ vol.42 2017 夏

あののぉ vol.42 2017 夏

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〔お宅訪問〕石と家と風景と。


あたたかな春の陽光につつまれるリビングで、ゆったりくつろぐご夫婦。奥様は卓球の元世界チャンピオン松﨑キミ代さん(旧姓)です。
現在は仕事のため東京で過ごすことが多いご夫婦ですが、年に数回奥様の故郷である香川に戻り、家族や友人と過ごします。
四季折々の木々につつまれ、ご夫婦をあたたかく迎え入れる石積みの住まいを訪ねました。


石と馴染む住まい

 自然が作り出す作為のないデザインは、傍に在るだけで安らぎを与えてくれます。高松市庵治町で採掘される庵治石を、外構だけでなく室内にも取り入れたリビングは、窓からの光を受け止めた岩肌がやさしい陰影をみせてくれます。食堂と居間を仕切る壁には、それぞれ違った表情の石が使われています。居間側は岩肌を活かしてダイナミックに積まれた庵治石。食堂側は断面の優しい模様を見せた由良石。この由良石は高松市由良町で採掘されていた安山岩です。皇居東庭の敷石にも採用されている石として有名です。「石の表情が豊かで絵画を飾る必要がないんです」と嬉しそうに眺めるご夫婦。はじめは内装に石が使われることに驚いたそうですが、今では身近に自然な素材があることを楽しんでおいでます。
 建物を上からみてみると卓球のラケットの形をしています。弧を描いた部分は庭を一望する窓となり、視界が広く眺めの良いリビングを実現させました。奥様がご希望されたのは小上がりの畳スペース。畳とフローリングには床暖房が施されており、いつもの椅子で庭の眺めを楽しんだ後、あたたかい畳の上でお昼寝をするのが旦那さまのお気に入りの過ごし方だそうです。
 庭には、新築の際に植えた木々がすくすくと育っています。10年前に植えた3本のケヤキは夏に木陰を作るほど大きく育ちました。


永く住み継ぐ

 いずれは移り住む事を考え、1年前に屋上防水やクロスの貼り換え、打ちっぱなしコンクリートの補強等いくつかのメンテナンスを行いました。古くなった部分は手を入れて、自然素材はその経年変化を楽しんで。一つ一つ丁寧に選び並べられた椅子や、さりげなく飾られた工芸品など、26年の月日を大切に使われてきた家具たちが、家に馴染んでいる様子からも、ご夫婦のこの家への愛情を感じます。


心が安らぐ豊かな暮らし

東京での暮らしも十分楽しいとご夫婦は話します。「公共機関でどこへでも行けるし、いろいろなお店が立ち並び、遊びきれないくらい。でも、香川に帰ってくると安心するんです。窓辺に座って季節ごとに表情の違う庭を眺めるひとときは、この家だからある贅沢な時間。飽きることがありません」。豊かな暮らしとは便利さを追求することではなく、心から安らげる場所があること、ご夫婦の穏やかな表情がそう教えてくれました。

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〔森里海から No.42〕潮だまり(タイドプール)


文・写真 菅 徹夫

  満潮時には海の中に沈んでいますが、干潮の際には海岸に現れる陸地部分を潮間帯と言います。その潮間帯が陸地として現れる時、所々に残る水溜まりが「潮だまり(タイドプール)」です。主に磯などの岩場に多く見られます。
 環境用語で陸域と水域、森林と草原など、異なる環境が連続的に推移して接している場所はエコトーン(推移帯)と呼ばれ、生物多様性が高いことで知られています。エコトーンとしての潮だまりには多くの生き物が生息しています。イソギンチャク、カイメン、ヒザラガイ、巻き貝、カサガイ、アメフラシ、フジツボ、フナムシ、エビ、カニ、カメノテ、ヤドカリ、ウニ、ヒトデ、ナマコ、小魚そして各種海藻類などなど・・・


 私が子供の頃、よく遊んだ近くの磯の潮だまりは、いつの頃か防波堤の設置とともに消滅してしまいました。かつて瀬戸内海の沿岸部には砂浜や干潟とともに磯などの岩場の潮だまりが数多く存在していたと思われます。そこは危険を伴う場所ではありましたが、子供達の遊び場として多くの生き物とふれあえる絶好の環境教育の場でもあったのです。そうした貴重な場も時代とともに護岸工事や埋め立てなどでその数を減らし、同時に生物多様性も貧困になってきています。しかしながら、現在でも少ないながらに、海岸近くに磯などの潮だまりは残っていると思われます。休日の過ごし方の一つとして、こうした潮だまりを探し出し生き物探しなどに興じるのも楽しいのではないでしょうか?。
 また、潮だまりのできる磯などの環境は海岸線の風景を形成する要素としても重要な役割を果たしてきたと思います。生物多様性を育む自然度豊かな環境は、そのまま美しい風景をつくります。自然環境の保護、再生と美しい風景を取り戻すこと・・・真の豊かさが求められるこれからの社会において大切にしたいことのひとつですね。

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〔工事現場紹介〕木の香り漂う現場


 穏やかな瀬戸内海に面した仁尾町で「地域密着型特別養護老人ホーム・老人デイサービスセンターにお荘(仮称)」の建設が進んでいます。2棟の木造平屋建てのうち、高い天井と現わしの梁が開放的なデイサービス棟では、木そのものの良さを見せる工夫が随所にみられます。特別養護老人ホーム棟では、家でくつろぐ様に過ごしてもらいたいという思いから、日本人に馴染み深い造りや素材を取り入れました。また、新しい厨房棟では最新の厨房機器を備え、既存施設も含めた全ての食事を賄います。
工事は、デイサービス棟、特別養護老人ホーム棟、厨房棟と、3棟同時に行われていますが、作業内容はそれぞれ違った工程で進んでいます。そのため現場監督は棟ごとの工程と、全体の進行を把握する必要があります。計画通りに工事が進んでいるか細心の注意を払って現場を見守っています。


現場名:地域密着型特別養護老人ホーム・
    老人デイサービスセンターにお荘(仮称)建設工事
場所:香川県三豊市仁尾町
構造:特別養護老人ホーム棟・老人デイサービスセンター棟…木造 
   厨房棟…鉄骨造
設計・監理:(有)富岡建築研究所
施工:(株)菅組
現場監督:左から安藤宏樹、佐倉光、藤岡航也、 三谷真矢

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〔大工のはなし〕第5回『小さな相棒』


彫り物を彫るのに欠かせない道具「鑿」。初めは、写真右の大きさの刃ですが、長い年月をかけ何千回・何万回と刃を研ぎつづけると、写真左の大きさくらいまで小さくなります。この大きさになるには、約40年かかるそうです。形は小さくなっても、これも立派な鑿です。棟梁は、この小さな鑿を一番使うそうです。長い年月、棟梁とともに歩み、丁寧に手入れされてきた鑿は、いわば棟梁の相棒といえる存在。
ピカピカに磨き上げられた鑿たちを自在に操つり、これからどんな作品をともに生み出してくれるのか楽しみです。

※写真の手は、棟梁の手。

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〔information〕

2017夏至 
100万人のキャンドルナイトを開催

6月17日(土)、古材と薪ストーブのお店古木里庫にて24回目を迎える「100万人のキャンドルナイト2017夏至in古木里庫」を開催します。ただ2時間、でんきを消してキャンドルの灯りで過ごすことで、大切な人との時間がより素敵になったり、ゆっくりと物事を考えることができたり、いつもとはちょっと違った夜になるかもしれません。 炎のゆらめきをみつめながら思い思いの時間を過ごしてみませんか?キャンドル作りワークショップ(ひとつ500円)も開催します。この日この場所でしか味わえない特別な夜…。ご家族、ご友人を誘ってぜひお越しください。


日時:2017年6月17日(土) 19時 ~ 21時
場所:古木里庫(三豊市仁尾町仁尾乙264 )
入場:無料 ※ワークショップ有料
問い合わせ:TEL:0875-82-3837 FAX:0875-82-3844
      MAIL:kokiriko@suga-ac.co.jp 


仁尾一齣

無人島「大蔦島」の頂上からのぞむ景色



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