自然と寄り添う暮らし

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あののぉ vol.41 2017 春

あののぉ vol.41 2017 春

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〔お宅訪問〕21年目のレンガの家


住んで20年。
日々変化する家族の暮らしを見守ってきたO邸。
丁寧に暮らせば、それに答えるように家も表情を変える。
この家の持つ懐の深さと、そこで育まれる豊かな時間。
そして21年目、これからも紡いでいく家族と家の物語。


丁寧な暮らし

 Oさんご家族の家づくりのはじまりは、長年住んでいた家の古くなった部分の改修を考えていた所に、下水道工事のタイミングが重なったことがきっかけでした。新築して20年経ち、今でも清々しくあたたかな表情をみせるO邸をたずねました。
 Oさんご夫婦が家づくりのはじめに希望されたのは、奥様が憧れた北海道の小樽運河沿いに並ぶレンガ倉庫のような外観です。開いた本をかぶせたような切妻屋根と軒の浅い箱のようなシルエット。時折ふと眺めては、憧れのレンガ倉庫同様、古さが味わいに変わるレンガの良さを実感するそうです。「シンプル」をテーマに生活動線にも配慮し家づくりを進めました。必要以上の部屋を作らず、なるべく1つの空間で完結するようなシンプルな間取りにしました。ダイニング横に、フローリングと同じ高さに畳を敷いた茶の間があります。落ち着いて畳に座り、居心地良く家族団らんできる空間になっています。また、水回りと家族のクローゼットを1階にまとめて配置することで、身支度・洗濯などをそこで済ませる事ができます。2階にはそれぞれの寝室をつくりました。
 シンプルな空間は掃除のしやすさにも繋がります。手入れがいき届いたO邸は、20年以上愛用しているという家具や身の回りの道具からも、清々しい暮らしがうかがえます。またシンプルな空間は、インテリアによって雰囲気を様々にアレンジできる楽しみもあります。玄関からみえる飾り棚のグリーンや、キッチンカウンターなどに置かれた小物類は奥様が少しずつ集めたもの。新築当初にはなかったけれど、子供たちから手が離れて時間に余裕ができた頃、少しずつ飾るようになったそうです。昨年は水回りを中心に改修し、さらに長く愛せる家になったO邸。「毎日過ごしていると気付かないけど、私たちと一緒に家も成長しているんですよね」と奥さま。日々、少しずつ家族の思い出を刻み、今のあたたかな表情のお家があるのかもしれません。


自然体で楽しむ
家族の時間

 現在、息子さん2人は就職し別の場所で住まわれていますが、お休みの時など家に帰ってくることを楽しみにしているそうです。「子ども部屋はそのままにしています。寝る時もいつものベッドで。」と笑う奥さま。息子さんも、寛げるいつもの家で、家族と集いのんびり過ごす時間を、お家で待つOさんご夫婦同様に大切にしているように感じました。家で過ごす時間は決して特別なものではなく、ここに帰るといつでも家族との日常を過ごせる、そんな場所になっているのかもしれません。
 O邸の、清々しい中にもあたたかく迎えてくれる表情は、家族の暮らしの中で育まれたものなのだと感じました。


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〔森里海から No.41〕ニホンタンポポ(日本蒲公英)


文・写真 菅 徹夫

 日本の春の代表的な花と言えば・・・タンポポを連想する人も多いのではないでしょうか。しかしタンポポにもセイヨウタンポポと呼ばれる外来種のタンポポがあります。日本古来のニホンタンポポには、さらにカンサイタンポポ、カントウタンポポ、エゾタンポポ、シナノタンポポ、トウカイタンポポ、シロバナタンポポなど、 種類以上が存在するそうです。ニホンタンポポは日本の春の象徴でもあり、3月終わり頃から4月にかけて開花します。しかしセイヨウタンポポには季節感がなく一年中何度でも花を付けます。またセイヨウタンポポは受粉しなくても種子を作ることができるため繁殖力が非常に強いのです。いまや日本のタンポポのうち半数以上をセイヨウタンポポが占めているという調査結果もあるほどです。ニホンタンポポとセイヨウタンポポは生息場所で棲み分けができているという説もあるようですが、基本的には競合する種であって共存できるものではありません。セイヨウタンポポが増えることでニホンタンポポはその数を減らしていると言えます。また近年ニホンタンポポとセイヨウタンポポの間で交雑が起こっており、遺伝子の攪乱という問題も発生しているようです。


 生物多様性を維持することの重要性は、近年少しずつ理解が拡がっているようですが「外来種」は生物多様性(遺伝子の多様性を含めて)を高めることにはなりません。生物多様性を守るためには日本古来の在来種をしっかり保護することが重要です。遺伝子の攪乱などによって多様性が失われる可能性も含めて、外来種であるセイヨウタンポポは駆除すべき対象といえるでしょう。ニホンタンポポとセイヨウタンポポは見た目ではほとんど区別がつきません。その違いは花の裏側にあります。花びらの裏側にある総苞片と呼ばれるものが、セイヨウタンポポは反り返っており、ニホンタンポポは反り返らずピッタリと閉じています。(写真参照)
 3月、4月はニホンタンポポとセイヨウタンポポの両方が花を付ける時期です。野に咲くタンポポが正しく日本の四季を伝えるニホンタンポポなのか、季節感のない駆除すべきセイヨウタンポポなのか、是非手にとって確認してみてください。香川県は全国でも珍しく在来種のニホンタンポポが多い地域のようです。まだまだ残る本来の日本のタンポポを楽しみましょう。

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〔工事現場紹介〕阿吽の呼吸でつくる現場


 柱ではなく壁で支える壁式鉄筋コンクリート構造は、広い開口部や柱のない大空間など自由なデザインを実現させます。その特徴を活かした平屋住宅の工事が高松市で進んでいます。モダンな打ち放しコンクリートの外壁。中庭を中心に各部屋が並び、庭を眺める窓からは外の目線を気にせず明るい自然光を取り込むことができます。
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 硬化する前の柔らかいコンクリートを「生コン」と呼び、生コンを型枠に流し込む作業を「打設」といいます。コンクリート打設工事は建物の骨格が決まる大切な工事です。歪みやズレは許されません。そのため打設の前にはいくつもの検査が行われます。中に埋め込む鉄筋が設計図通り配筋されているか確認する「配筋検査」。当日はコンクリートの柔らかさ、塩分濃度、空気量が配合計画書通りか、実際にミキサー車から生コンを出して検査します。それらの検査を通ってはじめて、打設工事を行うことができます。壁のような薄く広い面は、一気に天井の高さまで流し込むと型枠に大きな負担がかかるので、半分まで流し込む作業を同じ順序で2回繰り返すことで、天井の高さまで流し入れます。1回目の生コンを入れてから継ぎ足すまでに時間が経ち過ぎると、硬化が進み継ぎ足した部分との境目が目立つ「コールドジョイント」という現象が起こりやすいため、現場職人たちの素早い連携によって可能となる方法です。


■「型枠」
生コンを流し込む木の型です。コンクリートの重みに耐える強度や、硬化後模様となるセパレータ(*1)の配置を事前に検討し、施工図が作られます。
(*1)セパレータ…型枠の間隔を正確に保つための部品。打ち放しコンクリートに見られる丸いへこみがセパレータの跡。

■「打設」
様々な職人が工事に携わります。ポンプ車から伸びる太いホースを操り型枠に生コンを流し込むと、すかさずバイブレータを挿入し振動を与えたり、木槌で型枠をたたいたりして余分な気泡を抜きます。型枠が重みで変形していないか確認する他、電気設備の管理、ポンプ車やミキサー車の操縦、仕上げは金コテで平らにならします。現場を縦横するコード類が絡まないように補助したり、現場道路で誘導をしたり、今回の工事では総勢30名(2班編成)の職人が一体となり、作業を進めました。コンクリート打設は、現場の工程の中でも最も緊張感のただよう特別な一日です。

現場名:フォレストハウス
場所:香川県高松市
構造:壁式鉄筋コンクリート造
設計・監理:(有)後藤哲夫建築事務所
施工:(株)菅組
現場監督:篠原 宏明

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〔大工のはなし〕第4回『鉋(かんな)の刃口埋め』


大工道具のひとつ「鉋」。その手入れのひとつに「刃口埋め」があり、そこにも大工さんの技が光ります。材料と擦れ合う「下端」は、台直し鉋で削って擦り減った面を調節しますが、繰り返していると「刃口」の幅が広がっていきます。そこで別の木片を埋め込んで、元の状態を再現します。写真手前は「樫(かし)」、奥は「竹」を使用したもの。蝶々の形をした「千切り」は、割れがこれ以上広がらないように施された技です。元からひとつの素材だった様に隙間なくぴったりと埋まっています。

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〔お店紹介〕洋菓子・焙煎珈琲グルマンディーズ


自家焙煎の珈琲とともに食べる
家庭的なお菓子

 三豊市豊中町に洋菓子と自家焙煎珈琲のお店「グルマンディーズ」が誕生しました。洋菓子を作るのは神戸で7年間修行したパティシエ。フランス人の旦那さまと共に、ご両親の実家がある三豊市で、夢だったお店を開きました。
 フルーツをはじめ牛乳や卵など、厳選した食材は地元のものばかり。特に三豊市のフルーツは品質が高く、旬のものを使ったケーキは口の中でクリームと果汁がとけあい、甘い香りが広がります。また植物や土に触れることが大好きな旦那さんが育てる畑の果物も使っており、夏にはブドウが収穫できるというので楽しみです。
 珈琲をいれるのはパティシエのお父さま。退職後、もともと興味のあった珈琲について学び、お店では自家焙煎した豆を使った香り高い珈琲を味わえます。試行錯誤の末に生まれたオリジナルブレンドは、娘さんが作るケーキに合うよう苦味の強いブレンドに。カフェスペースもあるのでぜひお店でケーキといっしょに頂いてください。また、色とりどりのケーキの中にある「タルト・オ・カフェ」はお父さまのブレンド豆を使ったコーヒーのケーキ。家族の和が作る味のハーモニーです。


自然豊かなフランス・アルザス地方出身の旦那さま。お店でも、大好きな地元の雰囲気を感じてほしいと、絵付けされた瓦や色とりどりの食器たちをフランスから取り寄せて店内に飾りました。入口の看板は、旦那さまのお父さまの手作り。かわいいケーキのイラストや手書きの文字が、お客様をあたたかく迎えます。そのおおらかな雰囲気と調和するように、落ち着いた色合いの木と、どこか都会的なシャープな素材を組み合わせた店内は、ひと足踏み入れるとその洗練された世界にしばし日常を忘れます。「今はすべてが新しい店だけど、これからこの場所で作られる思い出とともに、人や素材や空気が馴染んでいくのが楽しみ」と語るお父さま。地元を大切に思い、その恵みに感謝して生まれたお店へ、ぜひお越しください。

住所:香川県三豊市豊中町笠田笠岡1631-5
電話:0875-24-8518
時間:10時-18時 
休み:月曜日・火曜日


近くの山の木を、お店の大黒柱に

仲南の森(まんのう町)で、家族みんなが見守る中伐り倒された樹齢80年の檜から、大黒柱を含めて3本の柱がとれました。根元は、木目の味わいがあたたかいカフェスペースのテーブルに。「立派な木が、お店で大黒柱として生まれ変わった姿をみて嬉しく思います。」とおっしゃる通り、森にいた頃のように堂々とした姿でお店を支えています。


大黒柱のおまけ
DAIKOKUBASHI(大黒箸)

上記の伐採した大黒柱の切れ端(端材)でつくった天然の割り箸を製作しました。檜の香りが心地よく、安心してお使いいただけます。


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〔お店紹介〕茶室 古木里庫庵


古材から生まれた茶室

 古木里庫の土間に、昨年秋より建築していた茶室が完成しました。その名も「古木里庫庵」。古木里庫にある建具や梁、床柱などの古材を最大限に活用し、大工の棟梁やその弟子たち、また瓦屋さんや左官さんの技が集結しました。古材の柱の曲線に合わせて作られた土壁。丸く切り取られた円窓のやわらかい明かり。惚れ惚れするような職人さんの手仕事の数々がつまった作品です。古木里庫にお越しの際はぜひご覧ください。



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