自然と寄り添う暮らし

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あののぉ vol.35 2015 秋

あののぉ vol.35 2015 秋

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〔お宅訪問〕海と空と山に住まう


「海のみえる所に住みたい」
その思いからスタートし、
家族みんなでつくった
暮らしの場所。
かつて芸術家が愛し
過ごしたこの場所から
Oさんご家族の
家物語がはじまります。


海を見下ろす山の中腹、緑の中にそっと佇むようにO邸があります。以前、彫刻家がアトリエ兼住まいとして過ごしていたお宅です。Oさんご家族がその母屋に移り住んで10年がたち、今度は娘さん夫婦とお子様のために、築80年の納屋を改修し住まいに、作品が展示されていた屋外ギャラリーは、広い庭へと姿を変えました。


改修の際、娘さんが希望したのは昔から憧れていた北欧のシンプルな暮らし。木を使う事や吹き抜けがある事をはじめ、理想の間取りもはっきりしていて手書きの図面にも詳しく書き込まれていました。細かいところは家族みんなで話し合って決めました。吹き抜けを見下ろす2階の手すりを、目隠しにせず透明のガラスをいれたことや、ぐるりと1階を見渡せる小さな通路をつくったことで、上と下の階のつながりがより強くなりました。天井を大胆に交差する梁は、改修した新しい住まいにも溶け込み、月日を重ねるほどに味わい深くなっていく木の力を感じます。リビングには薪ストーブがあります。母屋での薪ストーブのある暮らしから、そのあたたかさや炎が与えてくれるやすらぎを知っているからこそ、新居にも迷わず薪ストーブの設置を決めました。今では冬が待ち遠しいほど、炎の前でウイスキーを呑むのがご主人のお気に入りの時間だそうです。


リビングの大きな掃き出し窓からは、山に流れる透き通った風が駆け抜け、ひとたび庭に出ると視界いっぱいに自然がとびこんできます。眼下に見える海は、冬の北風が強い日特に青く、中秋には大きな月が島と共に浮かびます。紅葉の季節にはあたり一面が装いを変え、鮮やかな色に包まれます。春の季語で「山笑う」頃、木が一斉に芽吹き山が楽しげに騒がしくなるのを感じるそうです。日常の中で自然の表情の豊かさを知る。情緒と創造性をはぐくむ環境が暮らしに息づいているように思います。
この場所をみつけ、住まいにした先の彫刻家も、季節の移ろいに心動かされて作品を制作する日々を過ごしたことでしょう。見上げれば空があり、山の声を聞き、海の匂いを感じる。あたりまえに広がる景色に寄り添うように、O邸の暮らしがありました。


高松市 O邸 2011年10月竣工
延床面積/86.23㎡(26.13坪)
構造/木造2階建
設計・施工/菅組

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〔森里海から No.35〕仁尾の風穴


文・写真 菅 徹夫

三豊市仁尾町で「風穴」が約半世紀ぶりに再発見されました。場所は志保山の中腹で、「叺街道」と呼ばれる仁尾から高瀬の比地に抜ける旧街道にその登山口はあります。登山口付近に車を止めれば、そこからは徒歩10分程度で風穴にたどり着けます。(別地図参照)
風穴とは冷風が吹き出す洞窟や岩場のことを指し、冷蔵庫のなかった時代には“天然の冷蔵庫”として活用されていたようです。仁尾町の風穴にはコの字型の石垣が残されており(一部修復し再現)、石のすき間などから夏でも冷風が吹き出しています。


世界遺産に指定された「富岡製糸場と絹産業遺産群」においては「荒船風穴」が蚕種の貯蔵施設として絹産業を支えていたことが知られています。仁尾の風穴もかつては蚕種の貯蔵施設として、蚕種を冷蔵し蚕の孵化を遅らせることで養蚕を年に複数回行うことを可能にしていたようです。規模はまったく違うものの、仁尾町でもかつて養蚕業が行われていた時期があったことが伺い知れます。

香川大学工学部の長谷川教授によると、「冷風が出ているのは、崩落した安山岩が堆積(ガレ場)し、通過する風が地下水で冷やされているのではないか。冷風の吹き出し温度が12~13℃と低いことから、安山岩の堆積量(ガレ場長さ)は相当量あると推測する。風がどこからどのように流れて(入って)くるのかは、現時点ではわからない。」ということです。

身近にある地元の小さな産業遺産。是非足を運んでみてください・・・。

01:志保山風穴の蚕種貯蔵庫(「仁尾村誌」より)
02~04:地元の有志が石積を修復し元の姿を再現。


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〔工事現場紹介〕平成26年度三豊市立山本地区新設統合小学校(仮称)
       校舎棟・屋内運動場棟建築工事


三豊市山本町で新しい小学校の建設が進んでいます。1階は鉄筋コンクリート、2階は木造の混構造となっています。外壁の一部にも羽目板が使われ、内も外も木のぬくもりを感じられる校舎です。昔の木造校舎を思わせる切妻屋根にはハイサイドライトが設けられ、木につつまれた教室に明るい日差しをとりこみます。


ハイサイドライトとは?
頭上よりも高い所にある窓。部屋の奥まで光が届きやすくなります。


木造部分には大断面集成材が使われ、結合部分は結合金具で固定されます。最小限の穴を開けるだけで結合できるので、強度をそのまま保つことができます。


大断面集成材とは?
集成材とは木材を貼り合わせて造られた建築資材です。十分に乾燥させた木材を使用するため狂いが少なく、品質や強度が安定しています。また断面積により小断面、中断面、大断面集成材に分けられます。今回使用しているように短辺が15㎝以上、断面積が300㎠あるものは「大断面集成材」と呼ばれます。大規模の建築にも使用され、自由度の高い設計が可能です。
近くに山や川を望む新しい校舎で、木のやさしさに触れながら、元気にのびのびと育ってほしいと思います。


菅組現場監督:(左から)竹内、古本、高橋
施工:菅・田中・藤田特定建設工事共同企業体
設計:株式会社阿波設計事務所 四国支店

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〔大工の仕事〕古材reborn


古木里庫には長い歴史を刻み、そしてその役割を終えた梁や建具・古道具たちが眠っています。たまにお呼びがかかり、次の旅に出るものもありますが、それはほんの少し。多くの古材と呼ばれるものはその時が来るまで静かに待っているのです。 「この古材たちをなんとか甦らせたい!」そんな想いで、眠っていた家具に大工さんの手で命を吹き込んでもらいました。


趣のある和箪笥ですが、現代の一般家庭に置くにはちょっと大きすぎます…。そこで、大工の手により使いやすい大きさに分解しさらに補修を施すことで新しい家具として生まれ変わりました。

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〔イベントレポート〕


7月4日(土)~12日(日)に古木里庫で開催した「彫刻家はしもとみお展 木のどうぶつえん」が無事に閉園しました。
まるでそこにそのまま生きているかのようなリアルさと、見たものの心を一瞬で捉えるかわいらしさを兼ね備えた木の動物たちが、古材に囲まれた古木里庫に集いました。木彫りワークショップでは、みなさんそれぞれが大切にしているワンちゃんネコちゃんをはしもとみおさんにやさしく教わりながら作りました。会期中は県内外から本当に多くの方にご来場いただきありがとうございました。木のやさしさと力強さに包まれた9日間となりました。


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〔菅組 緑のカーテン観察日記〕

菅組本社では、毎年緑のカーテンを育てています。去年はたくさんのゴーヤが壁面を埋め尽くしました。今年は趣向を変え、朝顔や風船かずら、ヘチマなど様々な種類を植えました。ツルが伸びるのと同時に、いろいろな花が咲くのも楽しんでいます。


涼しさのヒミツ
葉っぱから水分が蒸散されることで周囲の温度が下がったり、カーテンのように日光を和らげることで室温の上昇を抑えてくれます。
自然の力を利用して、暑い夏を乗り切りました!

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〔information〕大黒柱伐採ツアー2015秋


まんのう町「仲南の森」で、大黒柱伐採ツアーを開催します!林家の豊田さんによって丁寧に管理されている、健全な山の桧を伐採します。樹齢100年近くの木を、住まい手さんご家族が見守る目の前で伐り倒される姿は、迫力満点です!
これから家を建てようとお考えの方、山についてご興味のある方など、見学のみでもご参加いただけます。ド迫力の伐採現場の空気を一緒に体感してみませんか?詳しい内容や申込方法は讃岐の舎づくり倶楽部HPをご覧ください。


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