自然と寄り添う暮らし

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あののぉ vol.27 2013 秋

あののぉ vol.27 2013 秋

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〔お宅訪問〕記憶を刻む木の家


玄関の格子戸の向こうに広がる
木の香りと木の空間。
内と外をつなげる窓や縁側。
凛とした気持ちになれる和室。
風土に溶け込んだ緑豊かな庭。
やさしくて、さりげない
日本の暮らしが、ここにはある。
月日と共に風合いを増す木の表情に
家族の絆が刻まれていく。



日本の木の家
時を重ねた焼杉の外壁が、庭の木々に溶け込むやさしい佇まい。「昔の木造校舎のように」と、家づくりの際に伝えたK夫妻。床や壁、天井など、随所に木が使われたのはもちろんの事、「切妻」とよばれる、開いた本をかぶせたような屋根の、水平線の美しさが視線の広がりや落ち着きを印象づけてくれます。木造校舎を思わせる玄関の大きな引き分け戸を開いた瞬間、駆け抜ける木の香りは、十年経った今でも木が生きている証です。



呼吸する家
リビング、ダイニング、キッチンが一体となった部屋は、ご夫婦と息子さん、二人の娘さん、家族五人のお気に入りの場所。二階にそれぞれの部屋はありますが、就寝時以外はリビングで過ごすことが多いのだそうです。家の中を見渡すと視界いっぱいの木目模様。床には、節のない流れるような木目のラオス松。天井や作りつけの水屋箪笥には、飴色に染まった杉の年輪が波紋のように広がっています。設計士と一緒に家具を探しに行った際も、あたりまえのように木が使われたものを選びました。また、珪藻土の壁や障子など、自然の素材に囲まれたこの部屋は、集まる家族の笑顔が思い浮かぶような、あたたかく優しい空間です。自然素材に包まれて暮らすことは、心が豊かになるだけでなく、環境にも嬉しい効果があります。「この家で匂いが気になったことがない」とおっしゃる奥様。木・土・紙、呼吸する素材が、天然の力で消臭、調湿を行い、まるで森林の中にいるような澄んだ空気が家の中にあふれていました。



同じ時を過ごす
大きな四枚の障子に映るのは、庭の木々から反射した緑の光。その先には、隣の和室まで繋がった広い縁側があります。深く張り出した軒のおかげで、雨や強い日差しの影響を受けにくく、暮らしの楽しみ方も広がります。視線の先には、表情豊かな草花や、ビオトープに訪れる生き物たちが、移り変わる季節を教えてくれるそうです。ヤマボウシの花は春がそこまでやってきているサイン。成長の早くなった葉に夏を感じ、赤く染まったモミジが秋の訪れを知らせてくれます。そんな自然の変化を縁側で眺める日々は、とても贅沢な時間だと感じました。



家族と木の家
Kさん家族をみていると、木が持つ不思議な力を感じます。目にはみえない木の声が、情緒を育て、絆をより深くしているのかもしれません。家族みんなで参加した仲南の森 大黒柱伐採ツアー。その時に伐採した桧の大黒柱が、今も力強く家族を見守っています。それに応えるように、勝手口の土間には、完成の記念に押された家族五人の手形が、仲良く並んでいました。

善通寺市善通寺町 K邸 2003年5月竣工
延床面積/159.78㎡(48.42坪)
構造/木造2階建 在来工法
設計・施工/菅組

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〔森里海から No.27〕ニホンミツバチ



文・写真 菅 徹夫

我が家の草屋根にニホンミツバチがやってきたのは昨年の春のこと。ある知りあいから巣箱ごといただいたのです。昨年はハチミツを採取することは出来ませんでしたが、今年の春先、待望のハチミツを約2リットルほど採取することに成功しました。養蜂といっても屋根に巣箱を置いておいただけで、特に世話という世話はしていません。採蜜の際にちょっとしたコツが必要ですが、蜂に刺されることもなくはじめての採蜜に成功しました。ニホンミツバチは、よほどのことがない限り人を刺さないと言われており、私も今回の一連の作業を素手で行いましたがさされることなく作業を終えることが出来ました。今回採取したハチミツは黄金色の美しい蜜で、とても美味しくいただきました。
現在、日本に流通しているハチミツは中国やアルゼンチンからの輸入品がほとんどで、国産のものは極めて少量です。国産のハチミツの中でもほとんどがセイヨウミツバチのハチミツで、ニホンミツバチのハチミツはそのごく一部に過ぎません。ニホンミツバチ一群の蜂蜜生産量は、明治以降導入され広く普及したセイヨウミツバチの1/8。体も小さく、飛行距離も短くセイヨウミツバチとの競争に負けてしまうのです。ハチミツの大量生産に適さないため日本の養蜂はニホンミツバチからセイヨウミツバチへと移行してきたのです。



しかし、セイヨウミツバチは名前の通り外来種、在来種のニホンミツバチとちがい生態系に与える負荷も見逃せません。セイヨウミツバチは寒さに弱く、人が守らなければ冬を越すことが出来ないのです。それゆえ冬に咲く野生の花の交配にニホンミツバチはかかせず、自然の生態系を維持するために重要な役割を果たしているのです。
ニホンミツバチによる養蜂を盛んにすることは、地域が少しずつ本来の自然の生態系に近づいてゆくことへつながります。セイヨウミツバチに比べ寒さに強く、四季を通じて採蜜するニホンミツバチは、地域が多様な植生の在来植物の森に覆われてゆくためにとても重要な生物なのです。
まだまだ市場に出回ることの少ないニホンミツバチのハチミツですが、たまには生態系に与える影響なんかを考えながらハチミツを選んでみるのも良いかもしれません・・・。



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〔工事現場紹介〕白鳥神社御屋根葺替平成改修工事



今年、御祭神日本武尊没後1900年にあたる白鳥神社で、屋根の葺替作業が進んでいます。傷みの激しかった桧皮葺(桧の皮を重ねた屋根)を取り除き、屋根下地を補強改修して、一文字銅板に葺きかえる工事です。本殿では、軒先の蛇腹(板を斜めに重ねた下面の化粧板)を生かす事で、元が桧皮葺だったという証を残します。


◇銅板一文字葺
まず、防水シートと絶縁シートを3枚重ねて敷き、先行して一文字の空隙部分に“しころ板”を打ちつけます。銅板を下から順に張っていき、接続部分は縦横共に噛み合わせるように繋ぎ、吊子で下地の野地板に固定します。その際にできる凹凸の影が、屋根全体の雰囲気を重厚なものにします。


◇緑青(ろくしょう)
銅板の特徴に、大気中で時間の経過と共に発生する錆の一種「緑青」があります。緑青は銅板の表面を覆い、錆を中まで浸透させない働きをします。塗装を必要とせず、やわらかく加工しやすい銅板は、複雑な曲線の多い神社仏閣の屋根に多く使われます。
緑青独特の奥深い色合いも素敵ですが、光り輝く銅板を纏った姿は、完成後わずかの間しか観ることができません。


今年の11月23日に本遷宮、24日には落慶奉告祭が執り行われます。竣工まであと2カ月半。拝殿の複雑な屋根の形に銅板が合うよう、一枚一枚丁寧に手仕事を進めています。

住所:東かがわ市松原69番地
発注者:工事奉賛会 会長 山﨑喜男氏
設計:中島政征建築設計事務所
施工:菅組

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〔お店紹介〕とらや



「なんの店だろう?」外観をみてそう思ったなら、ご主人の狙い通り。観音寺港にほど近い川のほとりに、割烹「とらや」はあります。90年近く前から代々受け継いできたお店を、昨年の11月に改修しました。古い家が立ち並ぶ川沿いの景観に溶け込む木の格子が落ち着きをみせます。改修の際、柱や分厚い桧のカウンター、頭上にかかる桧皮葺の軒など、特徴ある建具は以前のお店のものをそのまま利用しました。木で造られたものは、古くなるほどその場所に馴染み、深い味が生まれ、心地よい空間にしてくれます。



和風中心の店内にモダンを取り入れたのはご主人のアイデア。京都の建物や庭園にも使われている市松模様を参考にしました。窓の一部には、以前あった洋風ビルの型ガラスを再利用。そのレトロな灯りが、通りを歩く人の目を惹きつけます。桜製作所の椅子や、お客様が持ち寄ったマイぐい呑み入れなどの家具も、店内の雰囲気をより際立たせます。料理は、地元の新鮮な魚がメイン。旬の魚に合うようにと日本酒も多く揃えています。一品ごとにお勧めのお酒を出してくれる「ペアリング」もしてくださるので、ぜひ注文してみてください。



photo:右:じゃこめしセット 800円(甘辛く炊いた伊吹島産のじゃこを使った混ぜご飯。20年前から続く人気メニュー)

住所:観音寺市観音寺町甲3406
営業時間 17:00~22:30
電話:0875-25-3865
定休日:月曜日

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〔スタッフリレー9〕津嶋神社



今回は、三豊市三野町沖に浮かぶ津嶋神社をご紹介します。
ご存じの方も多いと思いますが、津嶋神社は16世紀末期の文禄年間の造営とされ、子どもの守り神を祭っています。
毎年8月4、5日に開かれる夏季大祭には、県内外から約5万人の参拝客が訪れています。今年初めてお参りに行きましたが、当日は、予想通りの混雑で、大変暑かったです。しかし、大勢の子供が来ていたこともあり、何だか明るい気分になれました。



海に浮かぶ小島に鎮座する本殿の美しさや、1年に2日間のみ橋を渡って本殿に行く事ができる事など、とても貴重なひとときを過ごせました。もちろん、夏季大祭で執り行われる祭事・行事も実に厳かで、津嶋神社特有の風景美と相まって、日本の伝統の美しさを再認識することができます。そして、一番の見どころは夜の花火です!本殿、橋、海、花火・・・何を取っても非常に良かったです。



ゆっくり上がる花火が独特の時間を紡いでいるようでした。参拝するなら、花火の日!と思いますので、来年にはなりますが、皆様も是非お出かけしてはいかがでしょうか?


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〔イベント案内〕瀬戸内国際芸術祭2013



瀬戸内国際芸術祭の秋会期に粟島会場でお披露目となる、日比野克彦氏の作品 瀬戸内海底探査美術館「一昨日丸」。この作品で使用される船の内装改修工事を、菅組が担当させて頂きました。
この船は元々、仁尾町の蔦島へ渡る「つたじま丸」として運航していました。そして今回、日比野氏の作品、船の美術館「一昨日丸」として、生まれ変わります。
菅組の宮大工が改修を手掛け、杉枠のショーケースには、日比野氏自ら三豊市粟島周辺に潜水し収集した、海底に眠る遺物や、そこで撮影した写真などが展示されます。



海底の知られざる世界が、日比野氏の目線で表現され、私たちの興味を引き付けます。ぜひ木の香りが漂う船の中で、海を感じながら日比野氏の作品を鑑賞してみてください♪



瀬戸内国際芸術祭2013

会場:香川県三豊市粟島
会期:10/5(土)-11/4(月)
鑑賞時間:9:30-16:30
作家:日比野 克彦
作品タイトル:瀬戸内海底探査船美術館プロジェクト

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〔ご案内〕仲南の森 大黒伐採ツアー



まんのう町「仲南の森」で、毎年恒例の大黒柱伐採ツアーを、今年も開催します!住まい手さんご家族が見守る目の前で、樹齢50年以上の桧や杉が伐り倒される姿は、迫力満点!これから家を建てようとお考えの方、建てられた方、山について興味のある方など、ご参加お待ちしております。



9月30日発行、雑誌「チルチンびと77号」にて、菅組が施工した「白栄堂 柳町本店」さんが紹介されます。観音寺まんじゅうでお馴染みの、老舗のお菓子屋さんです。店内には、以前のお店で使われていた古材や、作家さんのアイデアが活かされた家具・照明などが並びます。また、草屋根やビオトープといった環境に優しい配慮もなされています。ぜひご覧ください。

◇白栄堂 柳町本店
 観音寺市観音寺町甲1125-7


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