自然と寄り添う暮らし

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あののぉ vol.07 2008 夏

あののぉ vol.07 2008 夏

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〔お宅訪問〕平屋のおおらかな暮らし



5月の爽やかな風が吹き抜ける
綾川町の山間。
新緑がさわさわと風になびき、
ゆったりとした時間が流れる庭…風景に溶け込むように佇む、
平屋建ての家を訪ねました。



おおらかな暮らし
何もしないまま、この空間に身を任せることが心地いい…。たっぷりと降り注ぐ太陽の光に包まれて、庭の新緑の揺らめきを眺める。そこには家族の暮らしがあり、穏やかな時間が流れていました。

大きな木製のドアをくぐると、玄関というよりはホールのような大空間が広がっていました。玄関、リビング、ダイニング、キッチン、ロフトが一つの空間としてダイレクトに目に飛び込んで来ます。南面の大きく取られた窓からの光は、高い勾配天井やロフトまでも明るく照らし、開放的な空間を演出しています。間取りはリビングを中心に配置され、いつも顔を合わすようにと子供部屋は玄関と対角へ、北面の水廻りスペースからクローゼット、寝室からリビングへとひとつなぎとなっていて、常に空気が流れるしくみになっています。窓を開けると、どこからともなく穏やかな風が家中を巡ります。
また、OMソーラーシステムを利用しているため、  帖を超える大空間でも、一年中快適に暮らすことができます。以前からOMに興味を持たれていた奥さんも「冬場の、補助暖房としてのエアコンの可動は3ヶ月程度で済んだ」と驚きの様子でした。太陽の恵みを利用したシステムは、体にやさしいだけでなく、省エネ効果も十分期待出来ます。



平屋に住む
戸建て住宅=2階建てのイメージが強い中、なぜ平屋建てなのか? 答えはとてもシンプルで、2階建てにする必要がなかったからとのこと。人の動きは上下ではなく平行移動が自然で、平屋は地面に近い分、庭など自然との接点がより多くなります。そんなKさん邸の庭では、ご夫妻が少しずつ敷き詰めた芝生が、緑豊かに茂っています。またアプローチの枕木はご主人の力作で、高さを調節するのにとても苦労されたそう。ゆっくりと時間を掛けて、「つくる」ことを楽しまれていて、とても素敵に思いました。
また、庭をぐるりと囲む板塀には門扉が設置されていません。わざと設置していないというご主人。「周囲とのコミュニケーションを遮断してしまいかねない門扉は、作らない方がよい」との考えを体感するように、気が付けばごく自然に庭へお邪魔していました。

庭づくりも、家づくりも、そこに住まう方の思いがたくさん詰まっています。だからこそ訪れた時、心が躍るような、やさしい感動を味わったのだと、お話をお伺いして改めて感じました。



綾川町 K邸 2007年4月竣工
家族構成/夫婦・子供2人
延床面積/124.54㎡(37.74坪)
構造/木造平屋建 在来工法

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〔森里海から No.7〕讃岐のため池



文・写真 菅 徹夫

香川県には14,600余りのため池があると言われています。ため池の数では兵庫県、広島県に次いで全国第三位ですが、その密度はずば抜けて全国一です。日本最大の「満濃池」を有する県でもあります。雨の少ない香川県では、山が浅く流出してくる水量が少ない上に、地形が急傾斜であることもあって、降った雨は一時に流出して海へ流れ込んでしまいます。このため河川利水が困難なことなどの理由からため池の異常な発達をもたらしました。
ため池密度日本一を誇る香川には、独特のため池文化が根付いています。香川用水土地改良区相談役で農学博士でもある長町博さんは「昔から水不足に苦しんできました讃岐平野には、常に潜在的な水不足に伴う緊張関係がありました。その緊張関係が、水利の仕組みや水利組合共同体の組織をより強固なものにしながら、何百年という長い歴史の中で、それを「水の文化」にまで高め、現在に引き継いできています。」といわれています。「線香水」と呼ばれる讃岐独特の(※1)「番水」技法や(※2)「走り水」などは江戸時代から培われ継承されてきたものだそうです。
以前、日本人で初めてラムサール賞を受賞した中村玲子さんとお話しする機会がありました。その際「香川の満濃池を代表とするため池群とそれらをつなぐ水利システムは(※3)ラムサール登録湿地の価値がある」とおっしゃられていました。讃岐のため池文化は世界に誇れる水の文化なのです。
また、ため池は様々な生物を育むビオトープとしても重要な役割を果たしています。水辺空間とそれを取り巻く河畔林などの植物群、周囲の田畑、里山・・・それらが一体となって讃岐の原風景を作り出しています。それは前回に
も書いたように人と自然が共生する一つの理想的なありかただったのです。今、ため池の水質の問題が言われています。生活排水の流入もひとつの要因ですが、私は護岸工事のコンクリートで固めてしまったため池を数多く見かけます。コンクリート護岸のないため池を探す方が難しいくらいです。ビオトープ的観点からみると、この水際は非常に重要なエリアです。そこはエコトーンと呼ばれ、多様な生物(微生物やプランクトンも含めて)が繁殖するところです。葦などの水生植物と相まって生態系のバランスがとれることで水質も浄化されます。いわゆる生物浄化です。護岸をコンクリートで固めることで、ため池は自身の浄化能力を極端に低下させているのです。また、美しい景観を阻害する要因でもあります。
水質を低下させるもう一つの要因にブラックバスやブルーギルなど外来魚の侵入の問題があります。もともとその地に存在しなかった外来魚は日本の多くの在来種の生き物を絶滅の危機に追いやっています。生態系のバランスが崩れることで水質の浄化能力も低下します。「生物の多様性」を高めることは、ため池本来の姿を取り戻す為にとても重要なことなのです。香川のほとんどのため池に外来魚は入り込んでいます。外来魚の駆除は早急に取り組むべき重要課題だと思います。
香川県にとって貴重な資源である「ため池」と用水路などそれらを取り囲む様々な環境。その重要性に多くの人が気づき、保全・有効利用していくことは、これからの社香川のほと会の在り方、方向性において、とても大切なことのように思えるのです。



photo:左→豊稔池の石積ダム、右→善通寺市前池に咲くオニバス花



photo:山下池と鞍掛山(ホテイアオイで水面が覆われている様子。ホテイアオイは外来植物冬場には腐敗したホテイアオイが池底に溜まりヘドロ状になる。)

(※1) 番水制度(配水時間割)とは、水利用の時間による交代制度の事で、配水面積、減水深などにより水がまんべんなく掛かる時間を算出し、それを元に配水時間割を作り、それにより配水を実施することです。こうした用水管理の組織と番水制度は、江戸時代より変わることなく明治へと引き継がれて、大正、昭和、平成まで多少の修正を加えられ現在に至っている。
(※2) 「走り水」とは田の土の上を水が走る程度で給水(きゅうすい)をとめるという「かんがい方式」で,地域によっては田の一番高いところに旗をたて、そこに水がいったら給水をとめてしまいます。
(※3) ラムサール条約(2005年9月8日):湖沼や河川、干潟など湿地の保全と賢明な利用を目的とする条約で、正式名称は「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」。1971年2月、イランのラムサールで開かれた国際会議で条約が作成され、75年12月発効した。日本は80年10月に参加。条約事務局のホームページなどによると、登録されている湿地は146カ国の計1459(今年8月現在)。日本では釧路湿原や琵琶湖など13カ所が登録されている。

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〔古材格納庫〕古木里庫(こきりこ)



古木里庫は仁尾にある古材や古建具のリユース格納庫です
仁尾の海岸線沿いに、古材などを扱う倉庫「古木里庫」がオープンしました。
古材は、環境にやさしく、充分な迫力と存在感を持ち、先人達の刻んだ技と歴史を垣間見ることができる貴重な財産です。

やむなく解体される良質な柱や梁を、産業廃棄物として処分するのではなく、環境保護の趣旨の元、もう一度命を活かす目的で収集しました。倉庫内は古木材の他、古板材、古建具、古民具など、300点を超える品を保管しています。

倉庫の一角には、実際に古材を組んだ小屋があり、躍動感ある梁や柱、味わい深い古建具をご覧いただけます。また海が一望できる2階談話スペースには、建築やエコに関する本を揃えています。ぜひお気軽にお立ち寄り下さい。

オープニングイベントでは、ゆかりのある作家の、油彩画、パステル、絵手紙の作品を展示しました。生け花の演出も加わり、会場は彩り豊かで魅力的な空間となりました。今後もキャンドルナイトなど、様々なイベントを開催したいと考えています。




◆取扱品
古木材/古民家、蔵で使われていた柱や梁。中には明治時代の貴重な古材も…
古板材/古民家、蔵で使われていた棚板や天板。
古建具/欄間、格子戸、障子、蔵戸、アンティークガラス他。
古民具/箪笥、漆器、壺、陶器など。

◆問い合わせ
古材格納庫 古木里庫
香川県三豊市仁尾町乙264
TEL0875-82-3837

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〔竣工物件の紹介〕絵手紙作家の家 改修工事



建主様は絵手紙の作家でいらっしゃいます。おじいさま自ら建てられた大切な家を、これからも守っていきたいとの思いから、改修工事が始まりました。建物に使われている木材の一つ「ハクの木」は、和室の長押や玄関框、箪笥など様々な用途に使用されています。途中、なんと当時用いたハクの木の端材を発見!長い時を経て深みを増した木材は、玄関の式台や飾り棚、ベンチへと姿を変え蘇りました。
親子3代に渡り受け継がれていく木材、それを大切に思う建主様との出会いは、貴いものでした。



洗面台には、古木里庫の古材が使用されています。重厚感のあるケヤキの一枚板は、歴史をつなぐこの家にしっくりとなじみます。また、欄間を筆掛けとして転用するなど、作家ならではの発想で空間を演出しています。
古材はそのまま用いるだけでなく、様々な形・用途に応用することで、活きてくるものだと改めて感じました。

藤原英子●日本絵手紙協会公認教師/さぬき絵手紙の会 代表/学校絵手紙のススメ 代表●四国新聞教室を中心に活動されています。


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