自然と寄り添う暮らし

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あののぉ vol.51 2019 秋

あののぉ vol.51 2019 秋

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〔お宅訪問〕家族の時間を育む木の家



緑豊かな場所に佇む、紺色の箱のようなお家。そっと中を覗いてみると、まるで宝箱のように家族の笑顔あふれる日々がつまっていました。



森が見守る木の家

実家近くの慣れ親しんだ土地で家づくりを始めたSさんご家族。外観は四角い倉庫のようにシンプルに。内装は木をふんだんに使い、内と外のギャップを楽しみたいとのご希望からこの形が生まれました。床や天井に使われた無垢の木は、目に映る色も、手や足に触れてもやわらかく、家族をそっと包み込んでくれます。床に絨毯を敷くのがもったいないと感じるほどで、リビングダイニングの檜フローリングでは、時々川の字に並んでお昼寝をすることもあるそうです。


そのリビングに堂々と立つ大黒柱は、まんのう町でご家族が見守る前で伐り倒された樹齢80年の檜です。柱を隠した間取りの提案もありましたが、家族を見守る大黒柱を中心にしたこの間取りを選びました。玄関から近いリビングでは、外から帰ってきた家族をみんなの「おかえり」が迎えてくれます。
キッチンまわりは家事動線が短くなる様に考えられています。水場が一カ所に集まり、階段が近い事で、2階の日当たりの良い部屋干スペースへも、すみやかに移動できます。キッチンを明るく照らす窓からは、木々や空の様子が伺えたり、学校帰りの近所のお子さんたちが見えたり、外とのつながりを感じられる場所でもあります。



家族、地域、人と人が繋がる庭

リビングダイニングの掃き出し窓から繋がるデッキのあるお庭では、家族の思い出が日々重ねられています。
夏はプールやバーベキュー、また絵の具を使ったお絵かきも、デッキの上では大胆に楽しむことが出来ます。春や秋にはレジャーシートを出して、遠足気分でお弁当を食べるそうです。庭のモミジが紅葉すると、子供たちが葉っぱを拾ってお掃除のお手伝いをしてくれます。楽しそうな笑い声に、道行くご近所さんやお友達も思わず声をかけ、会話が広がります。
お庭からみえるお隣の畑が気になる様子の子供たち。大好きなご近所のおばあちゃんの姿を見つけると大きな声で挨拶をして駆け寄り、野菜の収穫をお手伝いするそうです。時にはその場で新鮮な野菜を一緒にかじることもあります。人の愛情と、土や太陽の香りに包まれて育った野菜は、子供たちの豊かな心を育てます。
こうしてS邸のお庭は、家族の心地よい居場所としてだけでなく、内と外、地域と我が家を繋ぐ場所にもなっています。


ご主人が幸せを感じる時、それは家族がそばにいて何気ない時間を過ごしている時。陽のあたる明るいリビングで、木の香りが残るそよ風の中、家族がくつろぐ姿をみて改めて、家族で暮らす楽しさを実感するそうです。

観音寺市S邸
2016年5月竣工
延床面積:152.59㎡(46.24坪)
構造:木造2階建て
設計・施工:(株)菅組

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〔森里海から No.51〕灰屋(はんや)



文・写真 菅 徹夫

 広島県の安佐町(あさちょう)というところに「高床式の田小屋(たごや)」なるものがあるという情報を、雑誌「チルチンびと」に掲載されている小林澄夫氏の記事で知ったのは2011年1月のことでした。ちょうどその年の秋、島根県へ行く用事ができたので、途中安佐地区界隈を車でウロウロ走ってみたのです。すると探していた「田小屋」ではないのですが、この地独特の見慣れない小屋をいくつか発見したのです。まるであのベーハ小屋が讃岐平野の中に点在するように、それはこの地に在りました。




 その小屋は灰屋(はんや)とか灰小屋(はんごや)と呼ばれるものらしく、大きさや意匠はベーハ小屋のように統一感はなく様々ですが、基壇(きだん)の部分が大方石積みでできているのが特徴のようです。後日調べてみると、草木灰(そうもくばい)や焼土(しょうど)などを製造する小屋でかつて広島県内に広く分布したようです。そこでは水田の土を、粗朶(そだ)、ごみなどとともに焼いて、麦作の肥料としたそうです。これらは焼土法とか燻焼土(くんしょうど)法と言って全国的に見ても古い自給肥料づくりの農法であったようです。このように土地の農法と密接に結びついていたこれらの小屋は水田の農道脇などに点在し、この地方独特の田園風景を創り出しています。建築が風景をつくる典型的な例だと思います。そしてこれらの小屋を構成する素材が石や土や木などの身近に存在する自然素材であることもまた、風景をつくる建築としての質を高めています。そしてそれらの素材は時と共に美しく朽ちていくのです。その経年美こそが、その地の原風景の一部としての点景の存在を成立させているのです。
現代の建築が忘れかけている建築としての本質的な価値がそこでは普通に表現されているのと思うのです。これらの点在する小さな小屋群はそんなメッセージを、私たちに発しているような気がしてなりません・・・。地域性とか土着性をいかに読み取って、その地に表現するのか。そこにしかない風景をいかにデザインするのか。今、私たちに与えられた大切なテーマだと思います。

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〔特集〕鎮守の森Project 10周年



 2009年に創業百周年記念事業として「鎮守の森プロジェクト」を開催してから10年が経過しました。
 鎮守の森プロジェクトとは、その土地に本来あるべき木を植えて「ふるさとの森」「本物の森」をつくり、命を守ろうという取り組みです。四国のふるさとの木は「シイ、タブ、カシ」が主役です。記念事業の際に「森を蘇らせる男」と呼ばれている宮脇昭氏の指導の下、そのシイ、タブ、カシを含めた54種類、約5300本を植樹しました。
 あれから10年、私たちはこの宮脇方式の植樹活動を菅組や菅生会(※1)によって継続して取り組んでいます。
 現在は本社の2階の窓からも植樹した木々の緑が顔をのぞかせるまでに成長しました。また、四季折々に咲く様々な花を求め、鳥や昆虫たちがやってきます。ここは、小さな命たちの憩いの場にもなっています。また、森はエコロジカルネットワーク(※2)の拠点として小さな飛石ビオトープの機能も果たしています。
 健全な生態系があってはじめて、健全な社会や経済が形成されます。私たちはこれからも「ふるさとの森」をつくる活動を継続していきます。
※1 菅組の協力業者の会
※2 野生生物が生息・生育する様々な空間がつながる生態系のネットワーク



【10年のあゆみ】
社屋をぐるりと囲むように植えた木々たち。
この地域の鎮守の森になりつつあります。

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  ■ 植樹実績 ※2019年9月時点 ■

   ・開始年:2009年
   ・植樹本数:約12,550本(※三本木鎮守含む)
   ・植樹人数:約1,400人(※1人2回以上含む)

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・三本木鎮守(さんぼんきちんじゅ)

建物を建てた施主様に、シイ、タブ、カシの3本の苗木を「三本木鎮守」と名づけてプレゼントしています。街のあちこちに小さな「三本木鎮守」が点在すればそれがやがてネットワークを形成して、生き物が飛び交うようになります。 木々が育ち、ふるさとの森が増えていく未来を期待して、これからもこの取り組みを続けていこうと思っています。
*植樹のご希望のある施主様にプレゼントをしています。



・菅生会(すがおかい)の植樹

菅組の協力業者で結成している菅生会では毎年春に植樹活動を行っています。業者のご家族や地域の人たちも参加してくれます。

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〔お知らせ〕仲南の森 大黒柱伐採ツアー



今年で18年目を迎える「仲南の森 大黒柱伐採ツアー」を開催します。
実際に新築する家の大黒柱になる樹齢100年ほどの檜(ひのき)が、住まい手さんや見学者の見守る目の前で、専業林業家 豊田均氏の手によって伐採されます。伐採以外にも特製弁当を気持ちの良い山の上で食べたり、林業家 豊田氏を交えての座談会もあります。見学のみのご参加も大歓迎です。お気軽にご参加ください。



■ 仲南の森 大黒柱伐採ツアー 

日 時:2019年11月10日(日) 9時頃~15時頃
場 所:仲南の森(香川県仲多度郡まんのう町)
参加費:1,000円/人(バス代、お弁当代、保険料等込み)
問合せ:tel≫0875-82-3837 mail≫request@suga-ac.co.jp



余すところなく使い切る

伐採した檜は根本に近い方から大黒柱を含め、4~5本の柱がとれます。先端部の枝が多い部分は、アスレチック風の木登り柱やコート掛け、ベンチなどにしたり、根に近い太い部分は、アレンジを加え机や椅子にしたりします。また、丸太から柱を取った後の端材を利用した「大黒箸」と名付けた割り箸は、檜の香りが心地よく、思い出いっぱいの記念品となるのはもちろん、安心してお使いいただくことができます。そして2019年からはこの端材を利用したSDGsバッジ「大黒バッジ」を作り、社員に配布しています。



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〔大工のはなし〕第12回『棟梁の手』


この手は、菅組山口棟梁の手です。
重い荷物を運んだり、硬い木を彫ったりするうちに、このような分厚く頑丈でたくましい手になっていきました。小指の爪は、彫り物のとき木くずをかき出すために伸ばしているそうです。
今年で  歳の棟梁。大工仕事を始めたのは  歳の頃。父親の仕事ぶりを見て学んでいきました。大工歴  年。「まだまだ一人前でない。学ぶことも多いし、息子や孫、若手大工に教えたいこともたくさんある。」と話す棟梁。
この手から生み出される建物が人々の暮らしを豊かにし、次世代へ受け継がれていくことを私たちは願います。

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〔information〕

持続可能な開発目標「SDGs(エス・ディー・ジーズ)」

SDGs(持続可能な開発目標)とは、国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載された2016年から2030年までの国際目標です。
17の大きな目標と、それらを達成するための具体的な169のターゲットで構成されています。
菅組は、これまでの建設事業を通した企業活動において、すでに「SDGs」に寄与する活動に取り組んでおりますが「SDGs」が決議されたことを契機に、これまでの枠組みを発展的に組み替えていきます。
これからは、社会的課題の解決に向けて企業に求められる役割の変化、そして建設業に関わっている者として果たすべき役割についてさらに理解を深めながら、営業・設計・施工・その後の運用の各段階での企業活動に関わる全ての関係者の皆さんと連携しながら「SDGs」に参画します。



建築産業における取組はSDGsの17のゴールと密接な関係にあり、世界が抱えるこの分野に貢献できます。
※「建築産業にとってのSDGs(持続可能な開発目標)-導入のためのガイドライン-」より抜粋



・かがわ県産ひのきのSDGsバッジ「大黒バッジ」
人工林は適切に管理することで森林が保全されます。使うことで森が元気になる。
この小さなバッジはそのほんの一歩です。
ミクロの世界がマクロの世界を変える。
そんな大きな希望をもった小さなバッジです。



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