自然と寄り添う暮らし

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あののぉ vol.52 2019 冬

あののぉ vol.52 2019 冬

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〔お宅訪問〕小さな家の土間暮らし



 街中にありながら、喧騒をはなれ、木のぬくもりと炎のゆらめきに時を忘れるような、自然のやすらぎに満ちたご夫婦のお宅を訪ねました。

 街にそっと佇むようにと希望された外観は、グレーのシックな外壁で風景に馴染みます。通りに面したデッキの素敵な暖簾は奥様の手作りです。季節ごとに模様を変え、訪れる人をおもてなししてくれます。木製の玄関ドアの表面は「ちょうながけ」で仕上げられています。ちょうながけとは、本来は梁などに荒削りを目的として大胆に削る大工さんの技のひとつです。これを意匠的に施すことで、手彫りならではのランダムな削り跡が、穏やかに波打つ瀬戸内海のようなやさしい風合いをかもし出します。鉄製の取っ手も手仕事の見えるデザインで、やわらかい木の風合いの中に黒い鉄がアクセントとなっています。



 一歩足を踏み入れると、開放感のある吹き抜けのワンフロアが迎えてくれます。窓の外には表から見えていた暖簾が揺れ、ほどよい目隠しになります。広い土間はご主人の一番の希望でした。昔ながらの家の造りが好きで、特に土間のひんやりとした空気感が心地よく、当初から土間のある家を計画していましたが、せっかくならと、リビングやキッチンもまるごと土間にするプランになりました。ひとつながりの土間空間はデッキとも自由に出入りができ、望んだとおりの居心地の良い場所となりました。


 その他のアイデアは、15年間住んできた母屋の造りを取り入れています。薪ストーブのある吹き抜けのリビングや、スケルトン階段と落ち着いたグレーの手すり等、ほとんどが慣れ親しんだままのかたち。薪ストーブの位置は中心にし、どの部屋からも炎が見えるように丸いデザインのものを選びました。また、自然素材をとりいれたいという思いから、内壁には和紙を使っています。庭に面した窓の障子は、以前当社の見学会で訪れた際に気になっていた障子を参考にしました。縦横の組子の数が少なくシンプルで、さらに外枠と内枠の寸法をそろえることで、閉めた時に一枚の障子のように見え、すっきりとした印象になります。

 和風だけでなく様々な建築スタイルに馴染むデザインで、奥様の好きな北欧雑貨が並べられたインテリアとも調和しています。全体的にシンプルに見せたかったことから、メインとなる場所には照明を吊るさず、代わりに木目の美しい杉の天井を間接的に照らし、やわらかな光を部屋全体に広げています。1階にほぼすべての生活動線がまとめられ、どの空間にいても薪ストーブを中心にしたワンフロアで繋がり、仲の良いご夫婦の会話も絶えません。



 旅行が好きで、これまでたくさんの国へ行かれているKさんご夫婦。観光ツアーは使わず、自分たちの目と足で情報を集め、現地の方に聞いたおすすめの場所に行くことが多いそうです。予想外の事もたくさんありますが、その分記憶に残って後に良い思い出となり、その土地の事がもっと好きになるそうです。K邸を包む大らかな雰囲気は、そのようにして様々な文化と深く触れ合い、固定概念にとらわれない発想から生まれたのだと思います。Kさんご夫婦のお人柄が垣間見えるような心地よい木の家でした。

高松市K邸
2019年4月竣工
延床面積:75.40㎡(22.84坪)
構造:木造2階建て
設計・施工:(株)菅組

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〔大工のはなし〕第13回『猪目』


この写真は、ある寺院の改修工事のために新しく彫った懸魚(げぎょ)です。この中のハート型の模様が「猪目(いのめ)」と呼ばれるものです。
諸説ありますが、この模様は日本古来から伝わり、猪の目の形に似ていることからこう呼ばれるようなりました。そして猪目は魔除けや福を呼ぶ、火事から護るなどという意味をもち、お寺や神社の色々な部位に使われている縁起の良い模様です。彫る人によって形や大きさは様々ですが、この写真の猪目は、中心にむかって盛り上がるように彫り、立体感を出したそうです。お寺や神社にお参りに行かれた際は、猪目を探してみてはいかがでしょうか。

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〔森里海から No.52〕洞下集落(ほらげしゅうらく)



文・写真 菅 徹夫

 茨城県つくば市北西部にある洞下集落。ここには街道沿いに風格ある門・塀・建物が連続する伝統的集落景観が残っています。特徴的なのは各家々の街道と反対側に屋敷林が連続していること。google earthの上空写真を見るとその様子がよくわかります。
 屋敷林とは家屋の周囲に防風林などとして植樹されたもので、その効用は防風、防音、肥料や燃料の供給、日射の遮蔽などに加え、鳥類の生息地や越冬地などビオトープとしての機能も併せ持っています。地域の生態系をつなぐエコロジカル・ネットワークを形成する場所として、建築群とともに地域の風景をつくっています。



 ここ洞下では、各家が今でも自身の屋敷林を守り、伝統的景観が維持されています。屋敷林といえば島根県出雲市の「築地塀」や富山県砺波平野の「カイニョ」、東北地方の「居久根」など散居村に見られる場合が多いのですが、ここ洞下のものは南北に連続する屋敷林で、しかも集落の東側と西側の両サイドに存在するという珍しいタイプです。散居村の屋敷林が点在する「飛び石ビオトープ」なら洞下のそれは連続する「コリドー(緑の回廊)」としての役割を果たしています。ビオトープとしての屋敷林が地域の美しい景観を維持することに一役買っているのです。美しい風景はたいていの場合、豊かな生物多様性を育む場合が多いように思います。地域独自の風景が地域独自の生態系、生物多様性を支えているのですね。
 屋敷林の樹種はシイ・タブ・カシを中心とする常緑広葉樹(照葉樹)の場合が多く、「鎮守の森」の樹種とだいたい一致します。日本の原生林(太古の昔から存在する森)はそのほとんどが照葉樹林だと言われています。原生林としての照葉樹林から「鎮守の森」や「屋敷林」をつなぐエコロジカルネットワークとしての集落、建築群。これからの街のあり方に大きなヒントを与えてくれてるように思います・・・。



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〔お知らせ〕古木里庫 薪感祭



薪ストーブを感じる祭り「薪感祭(まきかんさい)2020」を開催します。

【イベント内容】
・薪ストーブに炎を灯してみよう!
・薪ストーブを設置費用のご相談受付
・煙突のお掃除の実演・体験
・色んな薪ストーブの魅力を肌で体感
・薪割り体験・・・自分で割った薪を持って帰ろう!
・珍しい!かわいい!薪ストーブアクセサリーを大幅値下げで販売!※現品限り
・お手軽薪ストーブおやつレシピ公開・試食※土日限定

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会期 ≫ 2020年1月26日日~2020年2月2日日
時間 ≫ 平日:13:00~15:00
    土日:11:00~15:00
会場 ≫ 古木里庫(香川県三豊市仁尾町仁尾乙264)
TEL ≫ 0875-82-3837  mail ≫ kokiriko@suga-ac.co.jp

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〔information〕

・仁尾一齣「仁尾(曽保地区)の曽保みかん」



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