自然と寄り添う暮らし

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自然と寄り添う暮らし

あののぉ vol.56 2020 冬

あののぉ vol.57 2021 春

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〔お宅訪問〕讃岐舎を未来へ繋ぐ



梅の香りが風にのって春を教えてくれた朝。
野鳥のキジがひょっこり姿を見せる、のどかな高松市の郊外で暮らし始めて5年目を迎えるSさんの讃岐舎を訪れました。

お邪魔すると、いつも子供たちが笑顔で迎えてくれます。
大黒柱伐採ツアーに参加された時はまだ幼かった子供たちですが、H君は福々と健やかに大きくなり、長女のAちゃんはしっかり者のお姉ちゃんになりました。
この5年で大黒柱に刻まれた背比べの印も、もう少しでお母さんに追いつきそう。



ふつう。だけど、特別な家。

 ご主人が「住み心地はどうですか?」と子供たちに聞くと、「さいこー!冬は木のぬくもりを感じて、夏は風が通ると森のように感じる」と答えてくれました。絵本を読んでいるかのような言葉に、私は心から感動していました。
 Sさんのお家には本や絵本がたくさんあり、ゆとりのある階段はギャラリーになっていて「今日のオススメの本」や子供たちの個性豊かな絵など、目に留まるものばかりが飾られています。2階の「読書スペース」にはご夫妻の雑誌や本、小説が並び、ご主人がいつも座っているという一人掛けの椅子からは、のどかな景色が広がっています。越屋根のあるロフトへは梯子がかけてあり、大人でもワクワクするスペースです。そしてここはH君の秘密基地。サンタさんにもらったジク社製のミニチュアカーを得意げに披露してくれました。ご主人が毎朝ここに上り越屋根の窓を開けると、風が家中を流れるそうです。なるほど、確かにそれは森のような家だなと思いました。
 奥さまは「ただただありがたい。いろんな人が関わってこの家を建ててくれたから」とおっしゃいました。
 Sさん家族にとっての住み心地とは、決して快適さや使いやすさだけでは計れないものなのです。

写真:小上がりの畳スペースで遊ぶH君。太い柱がSさんと一緒にまんのう町の山で伐採した檜(ひのき)の大黒柱



写真:無垢の木の床にもしっかりとご家族の成長の跡が残っていました。作家さんにつくってもらったステンドグラスのライトが食卓を灯します。



ただの家づくりではない。
讃岐舎からつながる世界。


 「大黒柱伐採ツアー」で林業家の豊田さんと一緒に伐採した木が、この家の中心に並び、支えています。我が家の木はどこの山でどんな人が育てた木なのか。製材する人、加工する人、大工さん  。それを知ることで、この家は香川の山につながっているのだと実感でき、本当に愛着がわく特別な家になったと言います。
 また、讃岐舎を建てたことで、暮らし方の意識にも変化があったそうです。「家をひとつ建てることが、ここの環境も変えるし、山の環境も変える。いい影響なのか、悪い影響なのかを考えるきっかけとなり、小さな買い物でも家を建てることと同じように想像するようになりました。他にも、ここを通る人にとってこの家は生活の一部であり、町並みでもあり、風景。自分たちの家だけどみんなのもの。讃岐舎を通じて、人や自然とつながる意識をもつようになりました」
 讃岐舎としては64棟目にあたるSさんの家。ある時Sさんが、家を建てた大工をご自宅に招く機会がありました。大工の仕事は完成前の95%まで。あとは内装屋さんが入るから、完成した家を見ることは少ないと聞いて「それはもったいない!完成した家を見ることはこれからの大工人生にとって大事だと思って」と。そんな気遣いも、いろいろな人と関わり、思いを繋いで讃岐舎を建てたSさんだからこそなのだろうと、逆に私たちがその意味を教わる印象的な出来事でした。


写真上:2階のミニ読書スペース
写真右下:讃岐舎オリジナルキッチン 
写真左下:玄関周り。表札は「桜製作所」で制作したもの



写真上:ロフトの一角は、子供たちの秘密基地に
写真右下:階段ギャラリー
写真左下:家族の大切な一員の愛犬と奥さま



 実は菅組スタッフはSさんのお宅に幾度か伺っていますが、何回訪れても飽きません。訪れるたび、Sさんのお家がこの町にしっくりと馴染んでいくのがわかります。「こんな家に帰りたい」、そう思わせてくれる家です。それはこのご家族のもつ空気にも似ているからかもしれません。
 玄関に上がるとまず目に入ってくる、柱に立てかけられた小さな黒板に描かれた手描きのイラストに「ようこそ」の文字。「娘がいつも描いているんです。知らないうちに」とほほ笑む奥さま。今回はかわいい鬼が笑って出迎えてくれました。
 きっとここを訪れる人は、こんな細やかなおもてなしに癒され元気をもらい、またSさん家族に会いたいと思うのでしょう。

写真上:越屋根の内部。毎日小窓を開閉する
写真右下:明るい光が差し込む娘さんのお部屋
写真左下:娘さんが季節に応じて描き続けている おもてなし黒板

Sさんへ讃岐舎についてインタビューした際の動画


高松市 讃岐舎S邸
2016年8月竣工
延床面積:144.00㎡(43.64坪)
構造:木造2階建て
設計・施工:(株)菅組

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ウッドデザイン賞2020を受賞



 お宅訪問でご紹介させて頂いたS邸に代表されるコンセプト住宅「讃岐舎」一連の作品が、ウッドデザイン賞2020を受賞いたしました。香川県では初の受賞となります。
 ウッドデザイン賞(主催:ウッドデザイン賞運営事務局 林野庁補助事業)とは、「木」に関するあらゆるモノ・コトを対象に、暮らしを豊かにする、人を健やかにする、社会を豊かにするという3つの消費者視点から、優れた製品・取り組み等を表彰するものです。これによって、「木のある豊かな暮らし」が普及・発展し、日々の生活や社会が彩られ、ひいては国産材の需要が拡大し、適正な森林整備が進むことを目的としています。(受賞部門:ハートフルデザイン部門)
 
讃岐舎の作品集 2021年3月時点(69棟



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建築現場紹介 「珠光園 移転新築工事」



香川県丸亀市の飯野山の中腹に佇む「特別養護老人ホーム珠光園(じゅこうえん)」。
珠光園は、地域の方々に寄り添い、お一人お一人が穏やかで楽しく日常を過ごせるためのサポートを提供されています。
今回、その施設を移転することになり、弊社が施工させていただくことになりました。
その工事現場の様子をご紹介いたします。



建築集団のチームワーク

 新しくできる特別養護老人ホームは、地上4階建ての鉄骨造の建物になります。
 2020年9月に着工し、2021年10月末に完成予定です。現在は、全体の約半分の工程が終わった状態です。
 現場では、安全に働ける環境づくりを心がけ、完成後に施設を利用される方々に安心して心地よく過ごしていただけるよう、当社の品質管理部による安全パトロールや、各工程毎の品質検査など、細かく管理を行います。
 現場監督は、基準の通りや高さ、図面を元に現場に壁の位置などを書き込む「墨出し」という作業を行ったり、一日に何度も現場の隅々まで巡回し、職人さんの仕事の進捗状況を確認したりします。また、毎日その日に働く職人さん一人一人の体調管理を把握するなど、多種多様なことを日々行っています。
 多くの知見や技術、ノウハウを有した建築集団がチームワーク力を発揮して、建物の完成を目指してまいります。

YouTubeにて現場の様子を配信中「ある日の建築現場」


現場監督 ※左から
三谷真矢・篠原宏明(主任)・福本陽一朗

現場名  :珠光園 移転新築工事
場 所  :香川県丸亀市
構 造  :鉄骨造
延床面積 :約4,000㎡
設計/監理:有限会社 富岡建築研究所
施 工  :株式会社 菅組

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〔森里海から No.57〕泊り屋(とまりや)



文・写真 菅 徹夫

  前回紹介した茶堂とよく似た「泊り屋」と呼ばれる小屋が高知県宿毛市郊外に点在しています。この地区では幕末から明治にかけて、泊り屋を建てて若い衆が宿泊する風習があったそうで、かつては百八十箇所も存在していたといいます。今では芳奈地区に4箇所を残すだけとなったようです。
 泊り屋は別名「やぐら」ともいわれ、戦国時代の一村一域の頃、見張りのために建てられたやぐらがその起源であると言われています。そのためか、すべて集落の入口か中央の見晴らしの良いところに建てられていたようです。この泊り屋は、集落の警備や若衆の夜なべ、娯楽、研修、あるいは社交の場となり、幕末以降全盛を極めましたが、明治末年頃より夜学が盛んとなって、床の低い公会堂に改築され、あるいは風紀を乱すという理由でつぎつぎと取り壊されていったようです。(芳奈の泊り屋 立て看板より)
 芳奈地区に残る4つの泊り屋のうち「浜田の泊り屋」は、その機能及び建築様式において、最も代表的で重要なものである(文化庁データベース)として国指定の重要有形民俗文化財となっています。

写真:浜田の泊り屋



 「浜田の泊り屋は、九尺四方、木造高床式の平屋建てで、屋根は入母屋造り桟瓦葺である。明治十四・五年頃の改築で、四隅には根の張った自然木を踏ん張らせ、下部に比して部屋は小さくし、屋根の勾配をゆるく、軒先には僅かに反りをもたせ、いかにも美しく、しかも安定した風格のある姿で、幡多の各地にあった泊り屋の中でも最高クラスのものである。他三カ所の泊り屋もすべて木造高床式平屋建てで一間半に二間、下組の泊り屋は柱も自然木を使い、屋根は切妻、杉皮葺で明治中期頃のもの、靴抜と道の川の泊り屋は柱も四角、屋根は瓦葺きで明治末と大正初期のものである。」
(芳奈の泊り屋 立て看板より)
 他三カ所の泊り屋もそれぞれ「高知県有形民俗文化財」の指定を受けています。
 かつては百八十箇所も存在したとされ、今も宿毛に点在する独特の土着建築「泊り屋」。存在感のあるこのユニークな小屋は、この地域独特の風景を作っています。地域の風景と建築。この小さな小屋は現代の建築のあり方に少なからず問題提起をしているように思えてなりません。街の風景の中にどうあるべきか……そう考えることもまた、建築の重要な役割なのだと再認識するこの頃です。

写真
1.道の川の泊り屋  2.靴抜の泊り屋  3・4.下組の泊り屋(杉皮葺きの屋根にビニールシートが残念)  5.道の川の泊り屋の室内(右下の開口部が出入口)

写真右.大洲奥地の茶堂(少し反った茅葺き屋根のプロポーションも良い)
写真真ん中.まんのう町の四つ足堂(茅葺き屋根。ブルーシートが残念)
写真左.まんのう町の四つ足堂(竹の小屋組が手作り感があって良い感じ)

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〔大工のはなし〕第18回『歴史ある罫引き』



これは「罫引き(けびき)」という道具です。罫引きとは、定規となる板に棹を差し込み、この棹の先に罫引刃を取り付けた道具のことです。
罫引きは大きく分けると2種類あります。印を付ける「筋罫引き(すじけびき)」と、罫引刃で薄い板材などを挽き割る「割罫引き(わりけびき)」です。
写真の罫引きは山口棟梁のものです。右の筋罫引きは、棟梁の祖父から受け継いだ約90歳のもの、真ん中は棟梁が大工になって初めて手に入れた50歳のもの、左は40歳の鎌罫引き(かまけびき)(※)です。
手にしっくり馴染み、これからも受け継がれていく罫引きたちです。

※鎌罫引き:L字型の罫引刃を2本合わせて仕込んであるもの。L字の長い方の部分を棹の上でスライドさせて幅を調節する。

罫引きの作業風景動画(動画では「筋罫引き」「鎌罫引き」「割罫引き」の作業風景をご紹介しています)

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〔information〕・香川県空き家再生コンテスト【優秀賞】受賞 ・仁尾一齣


香川県主催の令和2年度「香川県空き家再生コンテスト」において、11月にオープンした一棟貸し宿「多喜屋」が、審査の結果、コンセプトや内容、デザインや創意工夫等について高く評価をいただき、【優秀賞】を受賞いたしました。

これからも、仁尾等に残る趣ある建築物を次世代に残し、技術を継承するために、地域に生きる建築会社として尽力していきたいと思っています。

■コンテストの詳細
令和2年度香川県空き家再生コンテストの審査結果



・仁尾一齣 「NIO SUNSET PEAK から見る夕景」


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