自然と寄り添う暮らし

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自然と寄り添う暮らし

 O邸の玄関に飾られているミモザ(ドライフラワー)のリース

あののぉ vol.70 2024 冬号

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HOUSE REPORT 「薪ストーブの前が指定席。会話が弾む安らぎの家」


HOUSE  REPORT  「薪ストーブの前が指定席。会話が弾む安らぎの家」

 いつかは叶えたいと思っていた、薪ストーブのある暮らし。大好きなアウトドアの気分を家でも味わいたいと建てた念願の我が家は、室内にいても木の香りや火のゆらぎが楽しめる空間に仕上がりました。
 今回訪れたのは、山間の自然豊かな町にあるOさんのお宅。理想の住まいを手に入れ、日々を楽しむご夫妻に話を伺いました。


HOUSE  REPORT  「薪ストーブの前が指定席。会話が弾む安らぎの家」

左:開放感のあるリビングの吹き抜け 右:リビングを出てすぐの場所にある薪置き場


薪ストーブのある家に憧れて

 山々や田畑、ため池など、見渡す限りのどかな風景が広がる香川県綾歌郡。豊かな自然に恵まれたこの町で、四季折々に色づく山を借景に建つ一軒のお宅があります。焼杉板を使ったすっきりとした配色の外観が印象的で、周囲に広がるのは樹齢100年という立派な梅の木が植えられた庭や、柑橘が鈴なりに実をつける果樹園。刻々と変化する風景や高低差のある地形を味方につけて周囲と調和するランドスケープは、さながら絵画のようです。また屋根からまっすぐに伸びた薪ストーブの煙突も印象的で、冬になれば白い煙が霧がかった山の端にたなびく様子も容易に想像できます。
 こちらに住まうのは、Oさんご夫妻。菅組が提案する「讃岐舎(さぬきのいえ)」に暮らし始めて3年になります。結婚後しばらくはマンション暮らしでしたが、キャンプや釣りなどアウトドアが趣味のご主人が「薪ストーブのある家に住みたい」と、家づくりを開始。さまざまなハウスメーカーを検討していた頃、新聞に折り込まれていた1枚のチラシに目が留まりました。


HOUSE  REPORT  「薪ストーブの前が指定席。会話が弾む安らぎの家」

木の雰囲気いっぱいのリビングが大好きと話すOさんご夫妻


家を建てることは暮らしをつくること

「チラシに載っていた家を見て、自分が思い描いていた家だと思いました。それが見学会に足を運んだきっかけです」とOさん。それが菅組との初めての出会いでした。
 そこからさらに数軒、菅組の家を見学に行き、建てたいという思いが募ったご夫妻。同時に他のハウスメーカーにも足を運び、理想の家を探したのだそうです。
「素敵な家を建てる会社は他にもたくさんあったんです。でも自分たちの感性に合うのは、やはり菅組の家でした」と当時を振り返るOさんですが、いろいろな会社を回って比較したことで、感じたことがあったそうです。それは、菅組が〝ただ家を建てる〟のではなく、〝暮らしを提案する〟会社だったこと。使う設備の良さをアピールするのではなく、住まい手が思い描く暮らしに寄り添った提案をする姿勢に「この会社ならまかせられると思った」と話します。
 その後、予算や敷地の制約などの関係で、平屋ではなく2階建ての讃岐舎の建築を決めたOさんご夫妻。
「決め手は営業の三崎さんの言葉。『衣食住のうち、衣食の産地にこだわる人はとても多いのに建材の産地はあまり注目されない。でも讃岐舎に使うのは、香川県産檜や高知県産杉など産地がわかるものばかり。壁紙に使うのも土佐和紙なので、安心して過ごせますよ』と言われ、なるほどと思いました」


HOUSE  REPORT  「薪ストーブの前が指定席。会話が弾む安らぎの家」

左:大黒柱に使った檜の先端は、コート(帽子)掛けに。土台には大きな切り株を利用 真ん中:吹き抜けがあるおかげで、薪ストーブの熱が2階まで暖めてくれる 右:玄関ドアは香川県産檜の間伐材を使ったオリジナル。和モダンな雰囲気漂う


話が弾む心地いいリビング

 家の建築が始まってから、月に1度はOさんご夫妻と営業担当、設計士、現場監督で打ち合わせを重ね、徐々に思い描いていたものを形にしていきました。一日の大半を過ごすことになるリビングをできるだけ広くとり、念願だった薪ストーブはその隅に設置。薪ストーブの背面にはもともと祖父のものだったという庵治石を、贅沢に壁材として使うことで、唯一無二の重厚感が醸し出されています。また、天井は平屋を希望していたご夫妻の思いを汲んで吹き抜けにしました。開放感があることはもちろん、吹き抜けにすることで薪ストーブの熱が家全体を暖める効果もあります。
「壁紙や玄関ドアのデザインなど、讃岐舎は使う建材があらかじめ絞り込まれているため、選びやすかったですね。それにどれを選んでもバランスがいい。自然素材で産地もはっきりしていて品質も良いので、安心して進められました」とOさん。
 実は薪ストーブについては、それほど強い思いは持っていなかったという奥様。しかしこの家に暮らし始めて、ただ暖めてくれるだけの道具ではないということに気がついたのだそうです。
「飲み物片手に薪ストーブの前でおしゃべりをするのが、夫婦の日課になっています。火をつけるのは夫の役割だったんですが、この前初めて自分で火をつけてみて、できたことに少し感動しました。もう薪ストーブのない生活を想像できないですね」


HOUSE  REPORT  「薪ストーブの前が指定席。会話が弾む安らぎの家」

左上:リビングダイニングの外は広い庭。時々友人を招いてここでバーベキューを楽しむ 左下:薪用の木はOさんが自ら伐りに行くこともあるが、近くの造園屋さんから分けてもらうことも。切ってから2年ほど乾燥して使う 右:火を起こすのはOさんの仕事。炎の大きさや色でどういう状態かがわかるようになってきたのだそう


室内でも感じる自然の息吹

 建築中には、家に使う大黒柱伐採ツアーにも参加したOさんご夫妻。仲南の山に入り、林業家が切ってくれたのは堂々たる樹齢100年の檜でした。当初6寸だった予定がさらにひと回り太い7寸になったことで、その場で設計士や林業家も交えて設計プランを修正。突然始まった山の中での打ち合わせは「臨場感があって新鮮だった」と振り返ります。切り出した檜は柱や梁、ベンチやコート(帽子)掛けなど、切り株から枝先まで1本を余すところなく活用。設えの細部にもこだわり、室内にいても深呼吸したくなるような心地の良い空間に仕上がりました。
「家の中で一番好きなのは、リビングに寝転んで天井を見上げた時に視界に広がるダイナミックな木の空間」と話すご夫妻。温かみのあるこの空間を求めて、休日には多くの友人たちが集まるというのも納得です。


場所:香川県綾歌郡綾川町
竣工:2021年12月
延床面積:112.00㎡(33.94坪)
構造:木造2階建て
設計・施工:株式会社 菅組

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現場紹介 「お庭・お外・お風呂を楽しむ瀬戸内ホテル『Hotel O. Setouchi』の建設」


現場紹介 「お庭・お外・お風呂を楽しむ瀬戸内ホテル『Hotel O. Setouchi』の建設」

宿泊特典として、西側(写真の上側)の建物「琴弾廻廊(ことひきかいろう)」で大規模な天然温泉や11種類のサウナなどを堪能できる


 現在、香川県観音寺市の有明浜のすぐ近くで、人もペットも楽しめるホテルを建設しています。中庭を囲むように、瀬戸内・香川の名所をテーマとした魅力的な5つのタイプの部屋を全部で19室、設けています。
 ホテルの名前にもなっている「O」の文字と同じように、外部から直接中庭へとつながる道は存在しません。そのため、職人さんがスムーズに作業を行えるよう、重機の搬入のタイミングをはじめ工事のスケジュールを入念に計画しました。また、各部屋には中庭に面した大きな掃き出し窓があります。宿泊されたお客様が安心して室内でくつろげるように、中庭にはたくさんの樹木を植えて他の客室からの視線が気にならないようにしています。樹木の種類や大きさ、植える位置、角度なども計算し尽くされた配置になっています。
 皆様に喜ばれる建物を創り上げようと、建築プロジェクトの完成に向けてチーム一丸となって工事を進めています。

*お庭・お外・お風呂を楽しむ瀬戸内ホテル『Hotel O. Setouchi』のWEBページ


現場紹介 「お庭・お外・お風呂を楽しむ瀬戸内ホテル『Hotel O. Setouchi』の建設」

左:真上からみた様子。東側(写真の下側)の部屋には、プライベートドッグランが設けられ、愛犬とともに充実した時間を過ごすことができる。中庭の中心にはキャンプファイヤーができるスペースもあり、薪が燃える揺らめきを楽しめる 右上:南、北、西の壁面の扇形のある窓は、その独特な形状が建物の外観のアクセントに。曲線を描くデザインは、直線的な建築要素と対比を生み出し、建物全体に柔らかさと動きをもたらす 右下:ホテル内の廊下。扇形の窓枠は木製。室内に柔らかな自然光を導き入れることができる


現場紹介 「お庭・お外・お風呂を楽しむ瀬戸内ホテル『Hotel O. Setouchi』の建設」

上:外壁は、ジョリパットコテ仕上げ。職人さんの手作業で生み出された波模様が美しい 下:現場監督:左から 河野 竜介(所長)、橋本 響也


【建築概要 】

工事名:(仮称)HOTEL O.新築計画
場 所:香川県観音寺市有明町5-49
構 造:木造平屋建て
延床面積:748.12㎡(226.30坪)
設計・デザイン監修:株式会社 ANDas
設計・監理:有限会社 秋山裕英建築スタジオ
施工:株式会社 菅組

*お庭・お外・お風呂を楽しむ瀬戸内ホテル『Hotel O. Setouchi』のWEBページ

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お店紹介「創作和食『MAWARU』」


お店紹介「創作和食『MAWARU』」

 MAWARUは、2024年6月に香川県三豊市仁尾町にオープンした創作和食店です。伝統的な和食の技法をベースに、現代的なアレンジを加えた料理を提供しています。季節ごとに変わる新鮮な地元の魚や野菜、徳島県の祖谷地方で捕れたジビエ鹿、徳島県のブランド肉である阿波尾鶏を使った料理など、訪れるたびに新しい発見があり、ご当地ならではの一皿が楽しめます。
 


お店紹介「創作和食『MAWARU』」

上:訪れる人をあたたかく迎え入れてくれる佇まい。大きなガラス戸からもれる明かりが、夜の仁尾の街を照らします 下:奥の中庭の植栽ももともと生えていたもの。ライトアップすることで幻想的な雰囲気に


 米問屋(こめどんや)を営んでいた古民家を改装した店舗は、外観はそのままに、大きなガラス戸から店内の落ち着いた雰囲気をうかがえます。店内は、柱や梁などの構造材の骨格を残し、壁は漆喰を塗る前(荒壁・中塗り)の状態をあえて見せることで、日本家屋のつくりを感じられるようになっています。
 MAWARUでは、人と人をつなぐプラットフォーム「So-Gu」と連携し、香川・徳島の注目エリア(三豊市、琴平町、三好市)をめぐる周遊イベントを定期的に開催しています。人気の観光スポットだけでなく、各エリアで活躍する人の魅力や取り組みに触れ、学び、つながる新しい四国の楽しみ方が見つかります。
 四国の新たな周遊拠点となったMAWARUの、和の心と創意が織りなす料理をぜひ堪能してみてください。


お店紹介「創作和食『MAWARU』」

左:柱や梁などの構造材や壁の荒壁、中塗りの状態をあえて見せる 右:シェフとの会話も楽しめるカウンター席もおすすめ


お店紹介「創作和食『MAWARU』」

左:旬の食材を使った多彩な料理(三種お造り、お椀:清汁仕立て 蓮根饅頭と車海老、葛叩き) 右:徳島県三好産を中心としたワインを数多く取り揃えている

店名:MAWARU
場所:香川県三豊市仁尾町仁尾丁228
電話:0875-24-8855
営業:11:00~14:30 (LO. 14:00)※木曜休み、17:00~22:00 (LO. 21:30)
休み:火・水 ※祝日営業
駐車場:あり (店舗から徒歩2分の場所に6台駐車可能)

※営業時間・定休日は変更となる場合がございますので、ご来店前に店舗にご確認ください。

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〔森里海から No.70〕鞆の浦(とものうら)


〔森里海から No.70〕鞆の浦(とものうら)

左上:丘の上から見下ろす鞆港 左下:鞆港界隈(奥に常夜灯が見える) 右:鞆の浦随一の特産品「保命酒(ほうめいしゅ)」。生誕の地『太田家住宅』


文・写真:菅 徹夫

 広島県福山市にある鞆の浦。ここは2017年に福山市鞆町伝統的建造物群保存地区(通称:重伝建)として文化庁から選定された場所です。潮待ちの港としても栄えた鞆港は1978年まで香川県の多度津町とを結ぶフェリー航路でした。私も乗船した経験がありますが、1時間25分の船旅は、当時から鞆の浦を身近な土地として感じることができました。坂本龍馬率いる海援隊もこの地を訪れていたりと、四国とも大いに縁のある地でもあります。
 街には江戸時代の町家から戦後の洋風建築まで時代や様式の異なる建物が混在して並び建ちます。家々の扉や手摺などに独特のデザインが見られるのもこの街の特徴。外壁に舟板を使った建物も散見されるなど、港町らしい風景が繋がっています。宮崎駿監督の映画『崖の上のポニョ』の舞台としても知られています。


〔森里海から No.70〕鞆の浦(とものうら)

左:海沿いに干される干物が港町の風景をつくります 右:お土産店ではなく、実際にお店として営業されているのが良い


 重伝建の指定を受けて街並みが守られている鞆の浦ですが、かつては「景観論争」と呼ばれる長年にわたる争いがあったのです。鞆の浦の埋め立て架橋計画が持ち上がったのは1983年。三日月状の港を埋め立てて橋を架け、町を東西に結ぶ県道の新バイパスを通すというものでした。住民からは「橋をかけたら鞆の景観が壊れる」と反対の声が続出。2007年には住民159人が原告となり、事業の停止を求めて県を提訴しました。広島地裁は2009年10月に原告の請求を認め「鞆の景観は美しいだけでなく歴史・文化的価値を有しており、近隣に住み、その恵沢を受ける者の景観利益は保護に値する」と断じました。そして控訴後の2012年6月、広島県は架橋計画を正式に断念したのです。景観を重視した事業計画の変更は異例だと全国的にも話題になりました。ここで紹介した写真は2013年6月に訪問した時のものです。


〔森里海から No.70〕鞆の浦(とものうら)

左:舟板の外壁 右:舟板を外壁に使っている建物


〔森里海から No.70〕鞆の浦(とものうら)

左:こんな個性的な洋館も 右:宮崎駿監督が「崖の上のポニョ」を書き上げたときにしばらく滞在していた民家


 今では激しい争いの後を感じる要素はみじんもなく、静かな街並みが維持されています。「文明」と「文化」について時々考えるのですが、これまでの時代は「文明」が偏重され過ぎてきたように思います。鞆の浦の景観論争の結末はまさに「文化」が「文明」を制した稀な例と言えるのではないでしょうか。経済至上主義に未来がないことに誰もが気づいている今、「文明」と「文化」のバランスを取りながら両立させていくことが求められているように思います。鞆の浦を散策しながらそんなことを想う一日でありました。

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〔大工のはなし〕第31回『手彫りの味わい』


〔大工のはなし〕第31回『手彫りの味わい』

 彫り物の魅力のひとつに、鑿の味わいがあります。大工が鑿を使って一つ一つ丁寧に彫り上げることで、木材に独自の表情が生まれます。鑿の刃が素材に触れるたびに生まれる微細な凹凸や線の揺らぎは、手彫りならではの温かみを感じさせます。
 また、鑿で彫る過程では、大工の技術と経験が如実に現れます。細かな調整や力加減などが必要であり、その結果として生まれる作品は、まさに唯一無二の存在です。その手触りや見た目の美しさは、機械では再現できない特別な魅力を備えているのです。

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〔information〕菅組の家サイト リニューアル



 この度、菅組の住宅サイト「菅組の木の家」は「菅組の家」と名称を改め、リニューアルいたしました。
 訪れてくださる皆さまに「菅組で家づくりをしたい、相談したい」と思っていただけるよう、情報を分かりやすくお伝えし、見たいものや知りたいことにスムーズにアクセスできるようにデザインを一新しました。また、菅組の家の品質やこだわりをより深く知っていただけるよう、コンテンツも充実させています。皆さまにとってより有益な情報を提供できるよう努めてまいります。
 これからも「菅組の家」をどうぞよろしくお願いいたします。



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