あののぉ vol.75 2026 春号
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HOUSE REPORT 「暮らしやすさへの想いを叶えた 光あふれる理想の家」
天井が高く、広々としたリビングダイニングは、子どもたち3人の格好の遊び場に。採光窓からは柔らかな自然光が射し、どこにいても心地よい明るさに包まれているのを感じます。
スムーズな家事を助ける動線や便利な収納、プライベートを確保した間取り。心地よく暮らすための希望をしっかりと形にした、家族みんなが大好きな心安らぐ家ができました。
白の外壁に黒の勾配屋根でシンプルながらもスタイリッシュに
快適で便利に暮らせる住まいを求めて
香川県三豊市。今回訪ねたTさんご一家の住まいは、海にほど近い、ゆったりとした時間の流れる住宅街の中にあります。玄関を入るとまず目に入るのは、レトロな印象の照明。この玄関ホールは廊下の機能も兼ねていて、向かって左の棟にはリビングダイニングなどの共有部分が、右の棟には子ども室が設けられています。
現在は、ご夫妻と小学校3年生、1年生、4歳の姉妹との5人暮らしのTさん一家。結婚当初は、同じ場所に建っていた築50年ほどの住宅にご夫妻のみで住んでいました。水回りなどはリフォームしたものの、使いにくい間取りや断熱性の低さに悩まされていたといいます。
「別部屋にあるキッチンは、冬は特に寒くて。家族の様子が分かりにくいのも気になっていました」と奥様。SNSで情報収集を重ね、家族みんなが暮らしやすい住まいのイメージを膨らませていきました。
左:奥様のセンスが光る照明器具は、空間ごとに異なるコンセプトでチョイス 右:細部までこだわった洗面室
暮らしやすさを形にした「コの字」型
その後、隣接する土地が売りに出されたことで、ご家族と一緒に自営業を営むTさんは隣地に事務所を新設。古い住まいも一新することになり、いよいよ理想の住まいづくりが始まりました。
菅組とは長らく仕事上の付き合いがあったTさん。「大切な家族が一生住む家ですから、しっかりしたものをつくりたい。菅組さんの仕事にはかねてから信頼を寄せており、安心してお任せできると思い依頼しました」
以前より住みやすさを感じていたことから、新しい住まいでも平屋を採用。一方で、3人の娘さんが成長していくことを考慮するとプライバシーの確保が課題となっていました。
「自分たちでは良い解決策が浮かばず悩んでいたときに、設計士さんが提案してくれたのが『コの字』型の間取り。『これだ!』と納得しました」と奥様。寝食がほどよく離れていることで、生活リズムの切り替えも促してくれるようです。
左:キッチン横は小学生の娘さんたちの定位置。 勉強机がぴったりと並び、姉妹仲良く宿題やお絵描き 右:窓からの自然光が明るい玄関。 視線の先に伸びるウッドデッキが広がりを感じさせる
たくさんの思いを丁寧に叶えて
ゆとりある玄関収納と洗面所を経てファミリークローゼットへと続く家事動線は、帰宅後の片付けがとにかくスムーズ。さらに、テレビ裏の壁は一面収納棚とし、細々とした日用品や掃除道具をすっきりと片付けておくことができます。奥様は「たくさんのリクエストをすべて丁寧に汲み取ってうまく形にしてもらえました。希望が叶って心から満足です」と満面の笑顔を見せます。
住まいの中心となるリビングダイニングは、勾配のついた天井で広がりある空間に。以前の住まいで課題だった断熱性も、樹脂サッシとペアガラス窓で大幅に改善しました。「こんなに広くても、冬でもエアコン1台で十分に暖かい。気温差を気にしなくていいのは快適ですね」とTさん。
夏場にはウッドデッキが大活躍。プールで遊ぶ娘さんたちを見ながらビール片手に涼んだり、親戚を呼んでバーベキューをしたりと小さな憧れが一つひとつ叶っているといいます。
左:「コの字」の凹部分に設けたウッドデッキが、両側の棟をゆるやかに繋ぐ 右:太陽光発電パネルと蓄電池を設置し、光熱コストを削減
家族を支えるかけがえのない住まい
「他にも部屋はあるんですが、」と奥様。「結局みんな、このリビングダイニングに集まってきます。ここが一番心地いいんですよね」
慌ただしい日々の中で、家族と過ごす団らんのひとときは、ふっと力を抜いてリラックスできる、かけがえのない時間です。
穏やかな明るさとたくさんの機能で、そんな時間をそっと支えてくれるこの住まいは、これからも家族それぞれの成長と変化に、温かく寄り添ってくれることでしょう。
左:梁にぶら下げたブランコは一番のお気に入り 右:笑顔の絶えない仲睦まじいTさんご家族
場所:香川県三豊市詫間町
竣工:2024年9月
延床面積:131.56㎡(39.87坪)
構造:木造平屋建て
設計・施工:株式会社 菅組
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現場紹介 「未来につながる『安心の拠点』を築く」
讃岐富士(飯野山)を間近に望むロケーション。左側:おひさま荘、右側:nature
讃岐富士(飯野山)を間近に望む丸亀市土器町西にて、子どもや若者の自立を支える施設「若者独立塾 丸亀おひさま荘」と「自立援助ホーム nature(ナチュレ)」の建設が進んでいます。敷地内にL字型に配置される2棟はいずれも、木のぬくもりを大切にした木造平屋建て。人の暮らしにやさしく寄り添う建築を目指したプロジェクトです。
取材に訪れた1月末、現場は完成に向けた最終の追い込みに入っていました。今回の同時施工では、まず「おひさま荘」から着工し、屋根工事の完了を見極めて「nature」の建て方へと移行。現場監督の判断のもと、効率性と精度を両立させた工程管理が行われてきました。現在は、職人が内装の下地を丹念に整え、大工が巾木などの取り付けを進めるなど、空間の完成度を高める仕上げ工程の真っ只中です。
上:職人さんの手によって、壁の下地が一つひとつ丁寧に整えられていく 左下:空から見た建設現場。L字型に配置された2棟の新施設が姿を現した 右下:周囲の景観に溶け込む落ち着いた色調の外壁
【建築概要 】
工事名:(仮称)自立援助ホーム改築工事
場所:香川県丸亀市土器町西
構造:木造平屋建て(2棟)
①若者独立塾 丸亀おひさま荘 ②自立援助ホームnature
延床面積:①約251㎡(約76.06坪) ②約176㎡(約53.33坪)
設計・監理:髙橋設計室
施工:株式会社 菅組
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お店紹介「受け継がれた時間とともに古材が息づく三代の八仙閣」
古木里庫が施工したバーモントキャスティングスのアスペンの薪ストーブ。 空間に寄り添う設えが、心地よい滞在時間を生み出している
徳島県で長く愛され続けてきた中華料理店「八仙閣」。装いも新たに歩み始めてから、丸2年の時が流れました。
創業者が26歳で最初の一歩を踏み出してから50余年。現在83歳になった創業者を中心に、子ども世代、そして孫世代までもが店に集い、家族三代でお客さまを迎え続けています。新しい空間で重ねられてきた2年という時間は、その結束をより確かなものとしながら、この店に静かに染み込んできました。
上:松の古材による力強い梁と古建具が印象的な客席 下:地域に親しまれてきた歴史と、新しい佇まいが調和する八仙閣の外観
香川県三豊市仁尾町に拠点を置く古木里庫は、「八仙閣が積み重ねてきた時間を、どう次の世代へつなげていくか」という問いに寄り添い、古材を活かすというかたちで新たな店づくりに関わらせていただきました。かつて建物を支えていた松の曲がり梁、繊細な意匠が息づく建具障子、中国の風景を描いた美しい欄間。古材それぞれが持つ「過去の記憶」を損なうことなく新しい空間に調和させることで、八仙閣の歴史と家族の物語を映し出しています。
店内に設けられた「くつろぎ部屋」には、古木里庫で施工したバーモントキャスティングスのアスペンの薪ストーブが据えられています。古材の力強さと薪ストーブの温もりが、家族三代にわたり受け継がれてきた味と重なり合い、八仙閣居心地のよさを形づくっています。
刻まれてきた時間が、これから先の物語へとつながっていく。そのそばに、古木里庫の古材があり続けることを願っています。
左上:松の古材による立派な曲がり梁が、空間に確かな存在感を与える 右上:左官職人が描いた白竜と古材が響き合う、印象的な一角 下:店の味を持ち帰る楽しみとして、餃子などの販売も行っている
店名:中国料理「八仙閣」
場所:徳島県徳島市 国府町日開642
電話:088-642-9449
営業時間:昼:11:00~15:00 夜:17:00~21:00(平日LO20:30)(土・日・祝LO20:00)
定休日:月曜日 ※祝日の場合は営業、翌火曜日休み、年末年始、その他不定休あり
駐車場:75台
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〔森里海から No.75〕豊島石(てしまいし)
豊島石と花崗岩の組み合わせによる石塀(コーナーストーンは豊島石)
文・写真:菅 徹夫
日本には各地にその地域特有の石が存在します。そしてその石が地域独特の風景をつくっていることも多くあります。香川県にも有名な庵治石(あじいし)をはじめ由良石(ゆらいし)、青木石(あおきいし)、鷲ノ山石(わしのやまいし)、小豆島石(しょうどしまいし)、サヌカイトなど、石の産地がいくつもあります。今回紹介する豊島石は一般にはあまり知られていませんが、暗灰色(あんかいしょく)の石で風化すると褐色に変化することもある火山礫凝灰岩(かざんれきぎょうかいがん)です。瀬戸の島々には小豆島や北木島など花崗岩の石の丁場が多いのですが、豊島には鎌倉時代から凝灰岩を産出してきた丁場跡が多くあるそうです。なかでも檀山(だんやま)の南壁にある「大丁場(おおちょうば)」は、全国でも有数の坑道掘りの採石場で、明治42年に開口しましたが平成18年頃には閉鎖したようです。
豊島では15世紀頃から鳥居や五輪塔などの生産が本格的に行われたようです。家浦八幡神社の大鳥居は豊島石製で、香川県最古の石鳥居(県文化財)とされています。五輪塔やラントウと呼ばれる豊島独特の墓石などにも数多く使われたようです。また、京都の桂離宮の石灯籠の多くは豊島石で造られているとのこと。桂離宮(かつらりきゅう)の他にも京都の二条城、大阪の住吉神社、岡山の後楽園、高松の栗林公園などにも豊島石を使った燈籠(とうろう)があるようです。全国的にも知られた名石だったのですね。また、明治・大正期には「豊島千軒、石工千人(てしませんげん、いしくせんにん)」と言われるほど、島には多くの石職人がいたそうです。
上:豊島石積みの塀を左官で仕上げた例 下:コーナーストーンと腰の大きな石が豊島石
豊島の唐櫃浜(からとはま)集落や家浦(いえうら)集落を中心に、この豊島石を使った石塀が数多く残っています。豊島石と花崗岩を組み合わせた石積みなど、多彩なパターンの石塀は豊島独特の路地空間を形成していて、道行く人々を楽しませてくれます。その地域で産出される素材(木や土や石)を使ってつくる建築や構築物は強力なエネルギーを持ってそこにあり続け、地域の風景をつくっていることが多いです。豊島美術館や瀬戸内芸術祭のアート、古民家カフェなども素晴らしいですが、街の風景をつくる地域特有の素材の生かし方もまた、未来に継承していきたい重要な価値観だと改めて感じます。豊島美術館に行かれる方は是非「石塀の街並み」まで足を伸ばして街歩きを楽しまれてはいかがでしょうか。
左:豊島石の大鳥居(家浦八幡神社)。文明6年(1474年)の建立、香川県最古の石鳥居 真ん中:ラントウと呼ばれる豊島独特の墓石 右:黒褐色の豊島石が混じる
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〔大工のはなし〕第36回『岩と木の、呼吸を合わせる』
四国霊場第七十一番札所、剣五山 千手院 弥谷寺(いやだにじ)。古くから信仰を集めるこの霊山の、険しい岩肌に抱かれた「水場之洞(みずばのほら)」の装いを新たにしました。
挑んだのは、無垢な檜(ひのき)と荒々しい岩壁との対話です。自然が描く複雑な凹凸に合わせ、木を削り合わせる職人の技を尽くしました。岩のうねりをそのまま木に写し取り、何度も微調整を重ねることで、まるで岩から木が生えてきたかのように、隙間なくぴったりと一体化させています。
数百年変わらぬ岩の表情に、大工の手仕事を重ねる。伝統の灯を次代へと繋ぐ、誇り高き仕事となりました。
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〔information〕木の香りに包まれる 新しい高松の拠点が動き出します
建替工事中の高松営業所にて、一足早く内装が完成いたしました。新しい高松営業所は、伝統的な素材と現代的な構造が融合したオフィスとなりました。
【県産材のポテンシャル】構造材をはじめ、床・天井にいたるまで県産ひのきを採用し、開放感と安らぎを両立させました。
【開放的な2階】木造のトラス構造により、広さ8m×12mもの柱がない大空間のオフィスが誕生しました。
【薪ストーブのある土間】薪ストーブが設置された広々とした土間は、ミーティングスペースとしても活用します。














