SDGs レポート

薬剤を使用しないシロアリ対策

木造建築において白蟻対策は、非常に重要な項目の一つです。現在使用されている防蟻薬剤は合成ピレスロイド系、ネオニコチノイド系などの農薬成分が主流で、胎児への影響などが懸念されていますが、シロアリ被害を食い止める必要悪との見方から使用が認められてきました。
1998年頃から我社では、人体や生態系への影響を考慮して有害な薬剤による防蟻処理は新築工事においては原則行わないようにしています。薬剤による防蟻処理は人体や環境への負荷が大きいだけでなく、永久的に持続するものではない(薬剤の持続効果は最大で5年間と言われています)ため根本的な対策にはなっていないと考えます。薬剤に頼らず、建築的な工夫による白蟻対策を行います。


コンクリート打設前型枠の様子(内側の型枠を浮枠とし一体打ちする)

コンクリート打設後(浮枠をバラしたところ)

コンクリート打放仕上の立上り部(打ち継ぎジョイントはない)

基礎立上り部貫通配管

打継をした基礎立上りコンクリート 横一線に見えるライン状の打継から白蟻が侵入する恐れあり


1.外周部立上りコンクリート一体打によるベタ基礎
一般的にはベタ基礎の場合でも立上りコンクリートは床板を打った後に打ち継ぐ場合が多いのですが、その場合打継ジョイント部から白蟻が侵入することがあります。打継ジョイントを作らないために、内側の型枠を浮き型枠とし立上りも一体でコンクリートを打設します。施工難度は高くなりますが、白蟻対策としてはとても大切なことだと考えます。
2.基礎立上り部はコンクリート打放し仕上とする
基礎立上り部はコンクリート打放し仕上とし、モルタル塗りなどの仕上は行いません。モルタル塗等を施すと見た目はきれいに仕上がるかも知れませんが、モルタルとコンクリートの間に蟻道を作る場合が有り、その蟻道が外部から目視できないため被害が拡大することがあります。またコンクリート打放仕上は失敗が許されないのでごまかしがきかず、良質のコンクリート仕上にもつながります。
3.設備配管の土間貫通は行わない
一般的に給水や排水設備の配管は土間コンクリートを貫通して土中に配管されるケースが多くあります。この場合貫通配管廻りにコールタールなどを充填し防蟻処理としていますが、コールタールなどの薬剤は人体に悪影響を与えるだけでなく防蟻効果も長持ちしません。こうしたちょっとした隙間がシロアリの絶好の侵入経路になる可能性があります。また、土間貫通した設備配管は将来的にメンテナンスができません。土間コンクリートの貫通を一切なくし、白蟻対策とするとともに設備配管のメンテナンス性を向上させています。基礎立上り部分を配管が貫通するため外観上は配管が露出で見えてきますが、こうした理由によるものです。


*(森林総合研究所 所報より)


4.キソパッキンによる全周床下換気
キソパッキンによる床下換気システムで床下の湿気を押さえています。なによりも土台がコンクリートに直接接しないため、常に乾燥していることでシロアリを寄せ付けにくくします。
5.鋼製束
束を木製ではなく鋼製束とすることでシロアリの蟻道をつくりにくくします。
6.土台・大引の樹種
土台や大引に使用する木材の種類も重要です。土台・大引とも檜(ヒノキ)の芯持材としています。表1でもわかるようにヒノキは耐蟻性の高い(シロアリを寄せ付けにくい)樹種です。
7.床下点検口と点検スペース
シロアリ対策には定期的な点検も大切です。床下を全面点検できるようスペースを確保すると共に床下点検口を設けています。

リノベーション工事など薬剤処理をせざるを得ないケース
弊社では新築以外にも改修工事や修繕工事も手がけさせていただいています。既にシロアリが発生している場合など、どうしても薬剤処理が必要なケースも結構あります。そうした場合にはネオニコチノイド系薬剤や合成ピレスロイド系薬剤のような農薬系のものはできるだけ避け、IGR剤(脱皮阻害剤)やホウ素系薬剤など人体や生態系への悪影響の極めて低いものを優先的に使用するよう努めています。

IGR剤はいわゆる「ベイト工法」と呼ばれるもので、シロアリの生態を利用して餌(ベイト剤)に含まれた成分が巣全体に波及し、巣にいるシロアリごと壊滅させるというもの。

またホウ素系薬剤は、自然素材「ホウ酸」を利用した防蟻剤で以下のような利点があります。
安全性:ホウ酸は非揮発性で空気を汚さない。ホウ酸自体安全性が高いので施工者にも安全。
持続性:ホウ酸は分解されないので、効果が減衰することがない。
浸透性:ホウ酸は木材中の僅かな水分に溶け込み深く浸透していく。